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久しぶりの凌さんの自宅。
何も変わっていない。
ギターを担いで入ればもう慣れたようにわざわざ迎える体制でもない。
結菜が私達の編成に合わせて譜面を起こしてくれていた。
それは本家よりも多少レベルは劣るが、私の技術力に対して難易度は充分だった。
『学校の課題、随分難しいのやるんだな。』
「やっぱり、私には難しいですよね」
『なんだ?随分弱気だな。』
「Overtureはなかなか厳しいんです。」
『まぁ、厳しいわな』
「そうじゃなくて。」
譜面は確かに難しすぎる。
けれど、私にとっての厳しさはそこじゃない。
もっと、しんどくて苦しいモノ。
「あのバンドは、亡くなった両親の想い入れが強くて。」
どこか気まずい雰囲気。
両親が死んでいることすら言ってなかったっけ。
『...そんなしんどいことなら無理に話さなくていいし』
「凌さんなら、聞いてくれるかと思って。」
束の間の沈黙。
私のケースから取り出したギターは、いつも私が使っているのもとは違うもの。
凌さんなら私の話聞いてくれるかな。
表面に飾られたものじゃなく、ホントの私。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時