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片付け等も終わり、喫煙所で一服中の凌さんの元へ向かう。
「すいません、お待たせしました!あれ、皆さんは?」
『お前が遅すぎて先に行った』
目線を合わせず、口からでる煙で遊ぶように答えた。
「...すいません。待っててくれたんですね。」
『置いてったら祟るだろ??』
「まぁ、そうかもしれません」
ハハッと笑う凌さん。
2人で打ち上げが行われる居酒屋へと向かう。
「今回のセトリは凌さんが考えたんですか??」
『メンバーで決めたけど、まぁ基本はな。』
「Overtureも?」
『うん。』
「どうしてですか?」
『俺の憧れだ。俺の中で最強だった。あの人は。』
空を見上げて呟いた。
凌さんは父を見て、憧れて音楽を始めたらしい。
「私もです。」
『でも、世代じゃないだろ?』
確かに、90年代を彩ったOvertureは凌さん達くらいの年齢でも知ってるのは珍しいくらいかもしれない。
私が生まれた頃にはもう全盛期を迎えていた。
「もし、生きていたら。凌さん達は同じステージに立っていたかもしれませんね。」
『俺はテツヤさん生きてると思ってるけどな。』
「どういう事ですか?」
『魂だよ。テツヤさんが亡くなってOvertureは無期限活動休止になったけど、あの人の音楽はずっと残ってる。』
お父さんは私の中でも生きているのかな。
『俺たちが忘れなければ、永遠に生きてるよ。』
「そうですね。感動しました。」
胸が熱くなった。
父の事をまだ想っている人がいて、皆が父を生きさせてくれているんだ。
『着いた。』
まさか凌さんと父の話をするとは思わなかった。
私が娘であることは知らないだろうが、両親を亡くした傷が癒えない私にとって、凌さんの言葉には救われた。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時