鍋ちゃんTV

君だけだよお蘭・下 ページ2

「蘭丸！」

名前を呼ばれ顔をあげる。
かすんだ視界に信長が近づいて来ているのを見た。
「おらん！どうしたの、大丈夫？！どっか痛いの？」

涙に視界が遮られ表情は見えないけれど、声で信長さんがうろたえているのがわかった。

「い、いえ痛くな…」

痛くないですと答えようとしたが、言葉が途切れた。

本当に、どこも痛くない？

…ううん。

僕は胸に当てた。

痛い、ここが。まるで、締め付けらていれるみたいだ。
でも…信長さんに迷惑はかけられない。

「なんでもありませんよ。」

僕は精一杯の笑顔で答えた。

次の瞬間、僕の視界は真っ暗になった。

「えっ…」

「蘭丸っ！何で嘘つくの？」

僕、抱きしめられてる？

「みんなどいて！ほら、おらん行くよ。」

信長さんはそういうと僕の肩を優しく抱きながら人垣をかきわけながら歩き出した。

「の、信長さん、ファンのみなさんはっ」
「おらんの方が大事。」
「えっ」
「てか、おらんより大事なものなんてないよ。」
「信長さん…」
「さ、行こう！ね、蘭丸。」
「…っはい！」

また、胸が締め付けられる。
でも、今度は辛くない。
…嬉しい。
僕はさっきまで何を不安に思っていたんだっけ。
信長さんの笑顔は僕の不安を忘れさせてくれる。
今こうして、こんなに近くで信長さんの笑顔を見ることができる。
なら、それでいいじゃないか。
これ以上望むものがあるだろうか。

「信長さん、これからもお側にいさせてくださいね。」

「何言ってるんだよぉ蘭丸ぅ、当たり前だろ？これからも、俺の側にいてね？」
「はい！」




君だけだよおらん

初めて会ったあの時に・上→←君だけだよお蘭・上

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す