【碧】Yuto.N (ページ9)

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『おはよう』

優斗「 … 早いね」

『生徒会長も5分前だよ』

夏祭りの前日、会場の最寄り駅で生徒会長と
待ち合わせをして大学の説明会へ。

優斗「 … 生徒会長って、もう任期終わるけど」

『ああ、そっか』

ずっと固い表情だった生徒会長は
人見知りで緊張していたらしく、
ぷぷっと笑った後に柔らかくなっていった。

会場に向かうまでの間に
生徒会長から高橋くんと呼ぶようになり

説明会が終わる頃には
お互いの将来について語る仲になった。

優斗「どうだった？」

『何か色々凄かった』

優斗「確かに。でも俺、ここに決めた」

説明会を受けた上でこの大学で学びたい気持ちは
とても強くなった。

優斗「椎葉さんは？」

『うーん … 正直まだ迷ってて』

優斗「そっか」

それでもすぐに答えが出せないのは
やっぱり雄登のことが引っかかるからで。

優斗「まあ …まだ最終決定まで1週間あるし」

『そうだね、ゆっくり考えるよ』

そう言ったタイミングで駅に着いた。

優斗「ねえ … あれ」

『ん？』

優斗「この前一緒にいた子じゃない？」

『えー？あ、雄登だ』

高橋くんが指す所を見ると
駅の壁に凭れながら携帯を触る雄登がいた。

優斗「 …… 」

『幼馴染みなの』

近づくと雄登はゆっくりと顔を上げた。

「やっと来た、遅いよー」

『何でいるの？』

「何でって迎えに？」

『連絡してくれたら良かったのに』

入れ違いになってたらどうするの？って言えば
ハハッと笑いながら後ろの高橋くんに視線を向けて
軽く頭を下げた雄登。

「 A 、帰ろう」

この前と同じように私の腕を引っ張る雄登。

ちらりと高橋くんを見ると
目が合い、この状況に何故か申し訳無く思った。

『高橋くん … 』

優斗「お疲れ、また月曜日」

『うん … またね』

私の次言う言葉を止めるように
高橋くんは手を振って私と雄登を見送ってくれた。

「 A … 」

『んー？』

改札を通った後、引っ張られていた腕を
やっと離した雄登は静かに振り向いて

「お願いだから離れて行かないで」

小さく言葉を零した。

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