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昨日の雄登の言葉を静かに受け止めた私は
お母さんに浴衣を着せて貰っている 。
母「 本当にこれで行くの?」
『 うん 、これの気分なの 』
母「 なら良いんだけど … 」
その間に高めのポニーテールをして
仕上げに普段は付けない赤いリップを唇に引いた 。
夏祭り当日の女子は意外と忙しいもので
あっという間に約束の時間になり 、
家を出る前に鏡で全身を写し出し
最終チェックをする 。
『 よし … 完璧 』
玄関を開けると紺の浴衣を着た雄登が
私に気付き 、目を見開いた 。
『 お待たせ 』
「 何 、その格好 … 」
『 どう?似合う?』
浴衣の袖をひらりと見せると
ガッと肩を掴まれた 。
「 … いつものピンクの浴衣は?」
『 あるよ 』
「 じゃあ何で黒の浴衣着てるの … 」
いつも私は淡いピンクの浴衣を着ていた 、
だけど私が今年選んだ浴衣は
毎年お姉ちゃんが着ていた黒の浴衣 。
「 こんなのだって付けちゃって … 」
そう言って私の唇に乗った赤色を指でなぞる雄登 。
「 Aには似合わないよ …… 』
初めて引いた赤いリップはいつもお姉ちゃんが
付けている物で 。
「 一体どういうつもり?」
『 どういうって …… 』
「 こんな姉ちゃんみたいな格好して 」
今さっき鏡でチェックして
完璧にお姉ちゃんの代わりになったはずなのに …
雄登の為にこうしようと思ったのに …
「 Aにはこの浴衣もリップも似合わないよ 」
『 …… 』
どうしてこんなに冷たい目で見られているんだろう
「 …… 今までごめん 」
視線に耐えられなくなり俯いた私に
雄登が謝った 。
『 … え 』
「 こんなことして欲しくて誘った訳じゃないんだ 」
その言葉にゆっくりと顔を上げた 。
「 AはAのままでいてよ 」
『 … 雄登 』
物凄く嬉しかった
お姉ちゃんの代わりとしてしか
見られてないんだと思っていたから 。
「 ほら 、早く行こう 」
早く早くって何歩か進んで私を呼ぶ雄登の隣まで
駆けると微笑むからドキドキして仕方ない 。
「 はぐれないように … ね 」
右手をギュッと握るから私もギュッと握り返した 。
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めろんぱん(プロフ) - このお話が大好きで完結後も定期的に読みにきます( ; ; )みるるんさんの作品大好きなのでこれからも応援してます! (2020年7月13日 4時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるるん | 作成日時:2019年6月16日 2時