キャンバス (ページ30)

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ほしとくずと吉沢亮ページ30

ほしとくずと吉沢亮(2017年11月頃)

「鴻上Aさん、吉沢亮さんクランクインですー！」

「「よろしくお願いします」」

スタッフさんの大きな声に合わせて現場に入る。
台本を握りしめ、初めて会うスタッフさんに挨拶をするわたしといつも通りの爽やかな笑みを浮かべた亮ちゃんの声が重なった。

今日から新しい映画の撮影が始まる。
すでに映画の情報は公開されていて、鴻上A映画初主演はラブコメディ作品！という、なんとも新人女優のような見出しでSNSではあっという間に大きな話題となって拡散されたようだ。

役作りのために何度も何度も読んだ原作。脚本だって擦り切れてしまいそうなほど何度も目を通した。
大好きな作品だったから、撮影がこんなにも待ち遠しかったのは初めてのことだった。

「今日からよろしく、A」
スタッフさんに挨拶を済ませて撮影開始まで待っていると、後ろから声をかけてきたのは亮ちゃんだった。
実はまだ公開前の情報だけど、2018年に公開される映画でかなり共演の機会があるのだ。

「またよろしくね」と言うと、「たしかにまただ！」と笑う目の前の亮ちゃんを見てわたしも釣られて微笑んだ。

撮影は11月。冷たい風が強く吹いて、なるべく原作を忠実に再現するために躊躇なく染めた暗めのピンクブラウンの髪が風に吹かれて舞った。
はためいた濃紺の短いスカートの裾を押さえて隣に座り込んでいる亮ちゃんに目を向けると、こちらをじいっと見上げながら彼はぽつりと呟いた。

「制服着てるAめずらしいな～」

実年齢は公表してないけど、確かにデビューしてから制服を着た回数なんてほんの少しだ。

大人な役でキャスティングしてもらえることが多かったので、成人してから撮影のために制服に身を包んだのは初めてかもしれない。

「亮ちゃんはよく制服を着てる気がする」と言うと「そうだなあ」と返され、しばらく見つめあった後、お互い吹き出すようにふふ、と笑った。

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