キャンバス (ページ31)

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噂話と悩みごととページ31

ほしとくずと吉沢亮の続き

亮ちゃん演じる山吹征司単独の撮影に入ったため数分休憩ができたわたしはモニターのもとへ向かう。

二回りほど年上に見える女性のスタッフさんに声をかけ、収録した映像を確認させてもらっていると、一緒にモニターをチェックしていたそのスタッフさんがこちらを振り返った。

「鴻上さんって本当にお綺麗でオーラありますよね～！」

まさかスタッフさんに褒めてもらえるとは思っておらず、驚いて目を見開いたままでいると、
「でもその衣装だと綺麗よりもかわいいですね！」
と立て続けに褒められて、照れくさくなってしまったわたしは「ありがとうございます…」と返すのが精いっぱいだった。

そういえば顔合わせで初めて監督に会ったときも、「今日実際に会うまでは本気でCGなんじゃないかと思ってて、今日ちゃんと鴻上Aが来るのか心配だった」なんて言われたなあ。
CG説はいつになったらなくなるんだろうか、なんて考えていると、じいっとこちらを向いていたスタッフさんが微笑んだ。

「オフの鴻上さんのいろんな表情が見られるなんて、私は幸せ者ですねえ」
その言葉にわたしは、何のことだろうか？ときょとんとする。

「鴻上さんはデビュー当時から物静かで大人びた役が多かったので、実は私たちみたいな裏方の界隈では鴻上さんは笑わないんじゃないかーって言われてたんです。でもあなたの笑顔を見てると、なんて失礼な噂なんだ！って思って」

そんな噂があったのか。まるで自分の話じゃないみたいで驚いた。
わたしの噂話なのに「へえ～」と頷きながら聞いていると、さらにスタッフさんは話を続ける。

「鴻上さんは若い女優さんにしては珍しくSNSもされてないし、バラエティー番組でも見かけることが少ないので、そういうところがミステリアスに感じるんだと思います」

ずいぶんと納得のできる話だった。
普段から明るい役ばかりだと話は別だけど、物静かな役ばかりなのにさらにオフの見えない芸能人なんて、たしかに変な噂が流れるのも無理はないのかも。

「でもね、鴻上さん。それって、周りの人がそう思っちゃうくらいプロの大女優顔負けの演技力を兼ね備えているからこその噂ですよ」

「そうだったら、本当に、うれしいことです」

なんだか不思議なスタッフさんだ。
今日会ったばっかりなのに、亮ちゃんにもマネージャーにも言えなかったことをなんでも話せるような気がした。

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