・ ページ21
雲取山に着いたはいいが、春風の居場所に検討もつかないAは、懐かしい自分の家へ向かうことにした。
太陽の陽が、地上に降り注いでない事が不安ではあるが、周囲に鬼の気配はしなかった。
辺りを警戒しながら、見覚えのある道を進んでいく。
Aが九年ぶりに踏みしめた道は、何処も変わっていなく安堵すると共に、切ない気持ちに陥る。
あと少しで家という所で、鉄錆のような人の血の独特な匂いがAの鼻腔を掠めた。
ドクンッと心臓が大きく跳ねる音がやけに鮮明に耳元に響いた。
次の刹那、Aは雪で積もった地面を力強く蹴って飛び出した。
「やめてくれ、そんな、私の勘違いであってくれ、おねがい、神様っ連れて行かないで！！！」
桜柱は、心の中で悲鳴のように叫んだ。
体温が下がっていく、呼吸が浅くなっていく。
勘違いであってほしい、私の思い過ごしであってほしい。と最悪の事態を否定する。
けれど、この先にあるのは自身の家だけだという事を彼女は理解している。
『……あ、あああああああああああっ！』
その光景を見た佑伊京A＿否、竈門Aは崩れ落ちた。
ずっと帰りたかった家は、所々壊され、血痕が飛び散っている。
ずっと会いたかった家族は、血まみれで食い散らかされている。
止めどなく流れる涙を拭いもせず、桜柱は立ち上がるとゆっくりと彼らのもとへ歩み寄る。
『………春風』
息が絶えた家族の足元で、翼を広げながら真っ二つにされ絶命している、春風がそこにいた。
腹を上にして倒れていることから、家族を守ろうとしたのだろう。
『…馬鹿……守ろうとしてくれたの？』
無残な家族の姿と相棒の姿に、彼女は拳を強く握りしめた。
家族へと視線を向けた時、ある事に気づいた。
炭治郎と禰豆子がいない。
その事実は、彼女の中で一縷の希望の光となった。
もしかしたら、生きているのかもしない。
もしかしたら、鬼から逃げているのかもしれない。
もしかしたら、二人はこの場に居なかったのかもしれない。
素早く脈打つ鼓動を落ち着かせ、大きく呼吸を何度も繰り返す。
到着した時は、動揺して分からなかったが、周りをよく見渡せば、点々と続く血痕と足跡が続いていた。
きっと、炭治郎と禰豆子だ。
どちらかは無事で、どちらかは怪我をしている事がすぐに分かった。
Aはすぐさま方向転換すると、足跡を辿って走り始めた。
どうか、無事であることを祈りながら。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2360人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆり - え！待って、私も桜柱なんだけど❗しかも、桜の呼吸一緒です (2021年11月11日 20時) (
レス) @page1 id: b7d6d649b3 (このIDを非表示/違反報告)
＊舞夜＊(プロフ) - 面白かったです！ �，任�願いします！！ (2021年10月4日 18時) (レス) @page49 id: a571a62cd6 (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - 安仙任さん» こちらこそ、引き続き読んでいただきありがとうございます！ (2021年1月7日 15時) (レス) id: 2c921dc331 (このIDを非表示/違反報告)
安仙任(プロフ) - 続きを書いてくれてありがとうございます。これからも応援しています！私は�，�いいです！ (2021年1月7日 13時) (レス) id: 80f06437e4 (このIDを非表示/違反報告)
蕨 - �，任茲蹐靴�お願いします (2021年1月7日 11時) (レス) id: e40d74d461 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朧月 | 作者ホームページ：http://fblg.jp/510814/
作成日時：2020年4月7日 16時
