5 ページ6
.
吹奏楽部に途中入部したAを含め、部員達は発表会に向けて曲を練習している。今は個人練習の時間だ。Aは空き教室で1人練習をしていた。
しかし…
『(どうしてこうなった？)』
1人で練習していたはずが、いつの間にやら隣には金髪が。そう、木藤良くんである。木藤良くんとは今まで2回ほどしか会話したことなく、仲が良いとは言いずらい関係である。そんな彼がなぜここにいるのか。
「なんでいるんだろって顔してるね」
『…なんで居るんですか』
「音が聞こえたから」
『音？』
「ホルンの音。Aちゃんが吹いてたんだね。」
『一応、中学から吹いてるから。』
「柔らかくて、でも太くて響きのある音色。上手だね。」
たぶん、彼は音楽経験者だろう。楽器を知らない人のなかで、ホルンを知っている人はあまり居ない。トランペットやサックス、クラリネットなどと比べるとあまり目立たないせいだろう。そんな中、彼はホルンの音を知っていた。
『ありがとう。でも、よくホルンだって分かったね。』
「僕、サックス吹いてたんだ。アルトサックス」
『そうだったんだ。』
楽曲によってはホルンとサックスは同じ動きをすることも多くある。だからだろうか。
「…聞かないんだね。」
『話したくないことは誰にでもあるだろうし、無理に聞くのは好きじゃない。』
「そっか…。いつもここで練習してるの？」
『個人練の時はいつもこの教室かな。静かだから集中できるしね。』
「分かった。じゃあ、僕は裕人たちのとこに行くね。」
『っあ、うん。じゃあね。』
「また来るね。」
『…は？』
そう言い、木藤良は教室を出て行った。
”また来る”という言葉通り、木藤良は次の日からAの練習を見に来るようになった。毎日30分だけ、Aの隣で会話もせずに静かに座っている。教室にはAが吹くホルンの音色だけが響いていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 149人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆい - とっても面白かったです！ 私もフルートやってて、すごい読んでて楽しかったです。 (2016年8月23日 17時) (
レス) id: 3f79c1fb6b (このIDを非表示/違反報告)
莉乃推し勝利担 - まさに私の憧れストーリーです。私は、トランペットを中学生からやっているからどうしても自分も世界に入ってみたくなる。更新楽しみにしてます。 (2016年7月30日 0時) (レス) id: 51208d69f4 (このIDを非表示/違反報告)
チロル(プロフ) - 小説内のオリジナルキャラが出てきてとても驚きました。今後田中くんがどのように関わってくるかドキドキします。更新頑張ってください!!後、オリフラ外した方がいいと思います!! (2016年7月27日 6時) (レス) id: ad3e95e003 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：凪 | 作成日時：2016年7月26日 22時
