綾辻行人の助手2 (ページ9)

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39話ページ9

__今日は辻村さんが遅い。
窓から見える向かい側のビルを見てそう思った。
まぁ、昨日の事件があっての今日。
矢張り先輩__安吾__に怒られてるんだろうな、羨ましい。

あ「綾辻先生、お茶要りますか？」

綾「嗚呼、貰おう」

あ「茶菓子も付けますね」

「嗚呼」と短く返事をして本に目をやる綾辻先生。
その目は、綾辻先生を知らない人物だと怯える事が出来る目だろう。
__お化け屋敷にお勧めだ。

あ「…昨日の、あの男性」

綾「嗚呼、あの男性教諭か。其れが如何した」

あ「綺麗でした、とても」

ふっと蘇る硝子に切断された男性。
気に入らない子供を殺す為に京極夏彦から方法を受けた、そして綾辻先生によって事故死した人だ。
綾辻先生は「悪趣味では無いか？」と眉を下げ、此方を見た。

あ「何て云うか、確かに悪趣味ですね…えっと…」

私はお茶を淹れ乍ら相手の納得する言葉を探す。
__何か良い例えはないだろうか。

あ「…あ、えっと…例えるなら辻村さんの泣き顔を見てる感じです」

御免なさい辻村さん、と思い乍ら云った。
序でに私は辻村さんが笑ってる方が好きだが、綾辻先生は困り顔が良いらしい。
__矢張り度が付くSだ。

綾「幻想的では無いが、不愉快な光景でも無いな」

あ「泣き顔が？男性が？」

綾「泣き顔だ」

そうキッパリ断言し、本をパタンと閉じる。
私は「そうですよね」と云い、お茶と茶菓子を運んだ。
もう私がトリップしてから何ヶ月か経つ、生活には慣れた。

綾「…秋夢、坂口君の事は如何思ってるんだ？」

あ「…いきなり何を？」

綾「お前は此処の人間じゃない、俺達をまるで神の様に眺めてきた…そうだろ？」

私は発言を頭で考え、「まぁ、そうです」と呟いた。
確かに、アニメキャラにとって私達読書は神だろう…色々と。

綾「俺や辻村君に会った時、トリップしたのだと判った筈だ。でも焦ってなかった」

「なのに」と一口飲んだお茶を起き言葉を続けた。
その目には少しばかり、何かの感情が浮かんでいる。
__その何か、は判らないが。

綾「坂口君と会った時だけ凄い焦っていた」

あ「嗚呼、はい…確かに私は安吾が好きですからね」

矢張りなと云う感じで溜息をする綾辻先生。
併し私は「でも」と続けた。

あ「今は安吾が二位で、綾辻先生が一位ですよ」

綾「…本当か？」

あ「ええ」

嘘は断じて付いて居ない。
綾辻先生とは一緒に生活して、色々と慰めあってきた。
未だ云えないが、好きなんだ。
伽羅としてではなく、恋愛対象として。