【太宰、中也、十五歳】 ページ8
先ず思ったのは、は??という一言。控えめに言って思考が宇宙へ飛んで行った。光の無い真っ暗な目、ボサボサの蓬髪、黒いネクタイに、白いシャツ。捲られた袖からは真っ白な包帯が見えている。
そして極めつけは右目に巻かれた包帯。
・・・えっ、太宰さんじゃん・・・??幼さからして恐らく十五歳・・・え・・・え??
と言った具合で先程から思考停止状態だ。当の本人は私が目を覚ましたと同時に何処かへ行ってしまった。待て待て待て、状況説明しろ。何が如何してこうなってんだよ。
久作に覆いかぶさって瓦礫で頭打ったと思ったら(多分)七年前ってどんなハプニング?
混乱しながらも身体を起こすと、頭がズキリと痛んだ。
『いっ・・・』
痛みはそのままなのか・・・というか私が此処に居るってことは七年後は如何なってるんだろう。出来れば汚濁中也見たかったんだけどなぁ・・・
そう思い乍らぐるりと部屋を見渡していると、奥にあった扉が、キィ、と音を立てて開いた。中から出てきたのは、白衣姿の森さんだった。思わずスっと背筋が伸びる。
そんな私を見て森さんはフフっと笑った。
「そんなに緊張しなくていいよ」
『・・・あ、ありがとうございます・・・・・・貴方は?』
「嗚呼、失礼。森鴎外。しがない町医者だよ」
しがなくも町医者でもないんだよなぁ・・・これ言うって事は此処はマフィアの何処かでは無いのかな。うん。なら良かった。私、一般人、死にたくない。
「君はこの診療所の前で倒れていたんだ。頭から血を流してね」
『頭から、血を流して』
「心当たりは?」
『心当たり・・・』
瓦礫から頭を守ろうとして気付いたら此処にいました、なんて云ったら意味不明だしな。はてさて、どうしたものか
うーん、と顎に手を当てて考えていると、森さんは判らないと受け取ったのか、ふむ、と云った
「判らないのならしょうがないね。ご家族と連絡は取れるかい?」
『居ないですね』
死活問題だよな、この訳わかんない時代で独りってどう生きろと。いっそマフィアに入れてもらうか。そう思ったが人を殺したくはないので速攻で断念した
さっきからズキズキと痛む頭に手を当てて治癒をする。然して所々にある打撲痕や擦り傷などもついでに治しておく。痛みがあると考えが上手く纏まらないのだ。しょうがないだろう
ふと、先刻から私をじっと見ていた森さんと目が合った。森さんはニコリと笑って云う
「ポートマフィアに入る気はないかい?」
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作者名:Wolf @ 元フェアリー | 作者ホームページ:http
作成日時:2024年3月18日 17時