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思い出し ページ5

中也は太宰さんに向かって、彼方に行け、と云うように手を振る。


「いいか?仕事じゃなきゃ一秒で手前を細切れにしてる。判ったら渚生の手ェ離して二米以上離れろ」


太宰さんはぐっ、と悩む素振りをして私の手をパッと離した。


「お好きに。私は中也と違って何時でも渚生ちゃんと手、繋げるし」


そうは云い乍らも何処か苛々している様子だ。別に手くらいだったら何時でも繋いで良いんだけど。太宰さんのこと嫌いじゃないし。

そこまで考えてふと、この間の事件(第一章,四十頁参考)を思い出した。途端にぶわっと顔に熱が集まる。クソ、忘れかけてたのに。

中也が顔を覗き込んでくる。


「おい、どうした?」

『何でもない』

「あ?ンな訳ねェだろ。首まで赤いぞ」

『何でもないって!顔覗くな莫迦!』


くそ、太宰さんの手の中で転がされてるみたいでムカつく。本当になんて事してくれてんだ。これから一生口聞いてやらん(餓鬼)

扉を開けると入って直ぐに地下へ続く床扉がある。中也は私から手を離すと、床扉を開けながら太宰さんに話し掛ける。


「太宰。"ペトリュス"って知ってるか」

「目玉が飛び出るほど高価い葡萄酒」

「手前が組織から消えた夜、俺はあれの八九年ものを開けて祝った。そのくらい手前にはうんざりしてたんだ」

「それはおめでとう。そう云えば、私もあの日、記念に中也の車に爆弾を仕掛けたなぁ」

「あれ手前かっ!!」


・・・ちなみに私が消えた夜の日は二人ともどんな感じだったんだろう。
ふとそう思ったが絶対碌なことにはなってないだろうなと思い、頭を横に降ってその思考を追い出す。触らぬ神に祟りなし。

梯子を降り、太宰さんを待っていると中也が心底うんざりしたように「ああ、気に食わねぇ」と云う。


「太宰の顔も態度も服も全部だ」

「私も中也の全部が嫌いだね。好きなのは中也の靴選びの感性(センス)くらいだ」

「あ・・・?そうか?」


中也は少し嬉しそうに自分の靴を見る。私はそれをぶち壊すように云った。


『絶対嘘じゃん』

「うん。勿論嘘。靴も最低だよ」


その瞬間、中也の先に行った太宰さんの頭を蹴ろうとする中也。しかし軽々と避けられる。ギャアギャアと騒ぐ二人を見ながら、早く行ってくんねぇかな、と思う。この二人の元気って何処から湧いてくるんだよ。アンパンマンか。元気が何時でも100倍なんか??(疲)

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作者名:Wolf @ 元フェアリー | 作者ホームページ:http  
作成日時:2024年3月18日 17時

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