【文スト】欠落感情【感プロ】 (ページ5)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:230 hit

終わりと始まり《凪良》ページ5

落札、という言葉が、広く大きな会場に響き渡った。
落胆する声やどよめきの声、喜びの声が聞こえてくる。嗚呼、耳障りだ。

私は今日、貧しい両親に売られて、だれかに高値で買われた。

手錠が外される。かしゃん、と音が鳴り手錠が地面に落ちた。

目の前の男は私に手を差し出す。

「君は今日から0378番だ」

『･･･はい』

ろくな組織じゃないんだろう。

子供心にそう悟った。ろくな組織が子供を番号で呼ぶはずがない。

大きな車に乗せられて、どこかへと向かう。これから何をされるかなんて、おおよその検討は着いている。

暫く車に揺られていると、急に車が止まった。扉が開いて乱暴に外に出される。
久々の外。周りは薄暗い森で、人の気配なんかない。

前を向くと、大きな白い建物があった。

連れられて中に入る。白衣を来た大人。簡易的な病院服を来た子供。
共通しているのは、誰しもが重い空気を纏い、生きている目をしていないことだった。

どこかで子供の叫び声がする。何をされているのかは判らない。だけどきっとこれから同じことをされる。

次の日からは地獄だった。

毎日、毎日毎日毎日同じ実験、同じ痛みの繰り返し。その割に食事も衛生環境も整っていて傍から見れば普通の病院のようなに見えなくもない。

だけど此処では子供の価値は無に等しい。何処から連れてくるのか、毎日子供が入ってきては毎日子供が亡くなる。

もう他人が死ぬのも慣れてしまった。死体に対する恐怖も、死に対する恐怖もなくなってしまった。

嗚呼、生きているのが厭になる。

生きても在るのは痛みと絶望だけだ。

こんな莫迦みたいな世界で生きていく理由なんか見つけられない。