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Aside






口笛を吹きながら夜の街を歩く。


先程送ったメールを今頃彼は見ている頃だろう。


それとも私を探してるのかも。


なんて想像にクスリと笑みを漏らす。


ふと目の前の路肩に一台の車が止まった。


黒のポルシェ。


近づけば運転席に座る銀髪が覗いた。






『よくここがわかったわね』


ジ「ワインを飲む約束をしていたからな」


『あら覚えてくれてたの』


ジ「フン」





そっぽを向いた彼だったが、素直じゃないのはわかっている。


助手席に座れば目的地も言わずに走り出す車。


ぼんやりと景観を眺めれば、背後へと流れていく街灯のあかり。


だんだんと暗闇が多くなってくる。


余計な会話はない。


それが心地よい。






ジ「明日、スコッチと任務にいってこい」


『了解』


ジ「飲みすぎるなよ」






短く返事をすれば止まる車。


目の前に広がる景色にはっと息を飲む。


私たちは街を一望できる丘上にいた。


人々の灯すあかりを見下ろし、ため息をこぼす。


ジンが後部座席からあの赤ワインとグラスを取り出した。





『たまにはいいわね。車内で飲むのも』





そう呟けば満足気にジンは笑った。


グラスにそそいで、ゆらりと回す。


血液のような赤が揺れる。


乾杯はなしだ。


くいっと一口。






『……ねぇジン』





返ってくる返事はない。


私は独り言のように言葉を紡いだ。






『お母さんのこと、好きだった?』






私が母親そっくりだというのなら、


愛した女性に似た私のことも好いてくれるのだろうか。


揺れるワインを見つめる。









「好きだったよ。心からな」









独白のようなものだった。


微かに聞こえたその声は落ち着いていて、


深くて、


知らない人のような声だった。


白銀の一匹狼が恋をした。


女は男を弱らせる。


まさにその通りだと思った。

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白ウサギ(プロフ) - まなさん» ありがとうございます!励みになります。頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします (2020年12月15日 17時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
まな(プロフ) - めっちゃ面白くて1話から一気読みしてしまいました!これからも更新頑張ってください!楽しみに待ってます! (2020年12月15日 14時) (レス) id: 0c8a00fae9 (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - 毬莉さん» コメントありがとうございます!絶対松田さんは待ってくれると思います! (2020年10月4日 14時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
毬莉 - 陣平のこと大好きです!こんなに手が汚れてしまった私でも待っててくれる彼は最高です!更新頑張ってください! (2020年9月29日 0時) (レス) id: 6812348321 (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - ありがとうございます。更新頻度は少なくなりますが、頑張ってきいきます (2020年9月26日 1時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白ウサギ | 作成日時:2020年8月14日 15時

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