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Aside





『どう、落ち着いた?』




私は空き部屋で蹲る降谷に、買ってきたばかりの缶コーヒーを押し付けた。


顔をあげた彼の目は腫れている。


きっと私が飲み物を買いに行っている間の一人の時間に、少しだけ泣いたのだろう。


彼が缶コーヒーを受け取ったのを確認してから、隣に腰かける。




降「ありがとうA」


『コーヒー代なんてどうでもいいよ』


降「そうじゃなくて、いろいろとありがとう。だいぶ頭が整理できた」


『それはよかった』




二人並んでコーヒーを飲む。


埃っぽい空き部屋の空気を吸いながら、


窓ひとつない地下の黒の組織のアジトで、


私の携帯の着信音が響き渡る。


仕事の用事かもしれないので普通ならすぐさま届いたメールをみるだろう。


けれどもそれを無視する私に降谷が尋ねる。





降「いいのか、ほっといて」


『いーのいーの。一日に一回だけとどく恋文みたいなものよ』


降「恋文……松田か」


『毎日日付が変わる頃になると送られてくる』


降「ほー。見ないのか」


『みたいの?』


降「みたい」





少しだけ彼の表情に笑顔が戻る。


知人の恋文の内容に好奇心があるのだろう。


私は特に見られて困ることもないので、今日送られてきた分を降谷とともによむ。






"A、どこにいるんだ?

殺人事件の重要容疑者になってる"





ピシッと背筋が凍るのを感じた。


殺人事件の重要容疑者。


私が。


思い当たることがありすぎて。





降「これなら強制的に松田は会いに来れるな」




降谷がおもしろそうに口の端を持ち上げた。


もちろん、事情聴取というやつだ。


はは、と乾いた笑みが漏れる。







『礼状おねがいします……』


降「残念だったな。俺がいるのに礼状なんて意味が無いぞ」


『公安めっ……!』





降谷の勝ち誇った笑い声だけが空に響いた。

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白ウサギ(プロフ) - まなさん» ありがとうございます!励みになります。頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします (2020年12月15日 17時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
まな(プロフ) - めっちゃ面白くて1話から一気読みしてしまいました!これからも更新頑張ってください!楽しみに待ってます! (2020年12月15日 14時) (レス) id: 0c8a00fae9 (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - 毬莉さん» コメントありがとうございます!絶対松田さんは待ってくれると思います! (2020年10月4日 14時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
毬莉 - 陣平のこと大好きです!こんなに手が汚れてしまった私でも待っててくれる彼は最高です!更新頑張ってください! (2020年9月29日 0時) (レス) id: 6812348321 (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - ありがとうございます。更新頻度は少なくなりますが、頑張ってきいきます (2020年9月26日 1時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白ウサギ | 作成日時:2020年8月14日 15時

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