檸檬色の君【アンナチュラル】 (ページ10)

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「そうか」

以外にも中堂さんはそれで納得したようだ。

興味をなくしたようにそっぽを向いてしまう。

心なしか胸が痛むのは気のせいだろうか。

『……………………』

中堂さんはそのまま所長室に入っていき、ソファーを整え始める。

そして横になった。

『え、泊まる気ですか？』

「いつも泊まってる」

『毎日？』

「バカか。いつもと言ったら毎日だろう」

『……………私も泊まります』

「……………………………は？」

そんな、ラボに寝泊まりしていいなんて知らなかった。

私は部屋を見渡し、中堂さんの使っていない所長室の外にあるソファーに腰をおろした。

「バカか？」

『それ、自分のことも馬鹿って言ってるようなものですよ』

「そうじゃない」

『じゃあ何ですか』

「家があるのに、何で帰らないんだ？」

明かりが灯っていて、暖かい家。

ただいまと言えばおかえりが帰ってくる。

安らぎの巣。

そんな家なんてない。

私にとって明かりがついた家に帰るとこは、

自ら罠に飛び込むようなものだった。

それは愚かな行動でしかなかったのだ。

それは今でも同じ。

誰もいない冷たい家に帰る必要があるだろうか？

『家は、嫌いです』

私と呪いを繋ぐ呪縛。

外を優雅に飛び回る小鳥が捕まり、

檻の中で暮らすうちに狩りの仕方を忘れてしまうように、

檻の中にいると私は生きることを忘れてしまうのだ。

『なので、これからはここに寝泊まりします』