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今までの雰囲気を払拭するように咳払いをひとつすると、首領は
「それで、用件だったね」
と云った。
首領は机の上に置いてあった銀色の葉巻入れを手にとって眺めてから、葉巻を一本取り出した。
それを吸うでもなくただ弄んだ後、ひっそりとした声で云った。
「人捜しを頼みたい」
「人捜し、ですか」
私は言葉を反芻した。
此処で死ね、でなかったのは幸運だが、安心にはまだ早い。
「幾つか確認をさせて下さい。
首領が此所で直々に依頼されると云う事は、尋常ならざる人物の捜索でしょう。
私のような一介の構成員では不足ではありませんか?」
「もっともな質問だねえ」
首領は微笑した。
「一般的に君の階級であれば、抗争の最前線で弾除けになるか、爆弾を抱えて軍警の屯所に駆け込む位の仕事が相場だ。
だが君の評判は聞いているよ。
今回の仕事は是非君に頼みたい」
首領は葉巻をケースに戻し、落ちかかる前髪を掻き上げた。
そして云った。
「行方不明になったのは、情報員の坂口安吾君だ」
私の心中を覗き見る人間がいたら、特大の火山が噴火している風景が見えただろう。
数え切れないほどの疑問符が火口から噴出し、空一面を覆い尽くす。
しかし私が実際にとった反応は、ぴくりと指先を曲げただけだった。
「流石に冷静だね。
ここで狼狽えるようなら捜索係には不向きかとも思ったが……佳いだろう、説明を続けるよ。
安吾君が消息を絶ったのは昨日の夜。
自宅には戻っていないようだ。
自ら姿を消したのか、或いは何者かに拐かされたのかは、未だ判っていない」
つまり安吾が姿を消したのは、私達と酒場で別れた後と云う事になる。
少なくとも酒場では、べつだん変わった様子は見られなかった。
あの時安吾は、自宅に帰ると云っていた。
その言葉が嘘であれば、私か太宰が気付いただろう。
おそらく__気付いた筈だ。
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ミュウ=ムー(プロフ) - 教えてくださり、ありがとうございます。 (2018年9月20日 19時) (レス) id: 1429768fb6 (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - オリジナルフラグははずさないといけませんよ。違反行為なので (2018年9月20日 19時) (レス) id: 8d50bc542b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年9月19日 21時