四十六話 ページ6
「………で?あと数日あるらしいのに、どうして僕らはこんな見覚えのない道を模索しつつ歩いているの?」
そう、僕らは歩いていた。
「え、いやだってほら、来いって言われたんですし……それに、怒乃さんのお父さんに頼んで今日にして貰いましたし」
人の気配は全く感じなかった。
夏至をとっくに過ぎた9月の4時は、既に太陽が西寄りになっているようにも見える。
車が明らかにすれちがえないような狭い道路の真ん中を堂々と僕らは歩いていた。
いや、足音は重く、別段堂々としていることはなかったか。
「まあ、それは良いんだけど。じゃあこれから助けに行くわけ?」
「そうですよ…?」
「んな簡単に……覚悟は決まってるの?」
「ああ、寝てる間に決まるあれのことですか」
僕はわざとおどけた調子で言ってみる。
柄にもなく神崎さんが固いから。
「………ふ、どうやら心配はいらないみたいだね」
苦い笑みを浮かべた神崎さんが僕を横目で見据えた。
神崎さんはサスペンダー付きのズボンのポケットに手を突っ込み、今度こそ堂々と歩き始めた。
「ま、実際心配要らないよ。何せ僕がついてるんだから」
その自信は一体何処から湧いてくるんだと思ったが、いつもの神崎さんだなと捉えておくことにした。
そんな神崎さんにつられるように僕の背もしゃんと伸びた。
すると、無機質な音声ナビが僕の持つ携帯で鳴いた。
<目的地に到着しました。音声ナビを終了します>
ポロロンというような、これまた無機質な音が聞こえた後、目の前の建物を見ると、やはりなんだ…廃墟だなと思うことしか出来なかった。
「ふーん、雰囲気あるじゃん、夜ならもっと凄そうだね、京くん?」
にこやかに建物への感想を述べる神崎さんに、およそ緊張の意は感じられない。
その子供らしい様子に今度は僕が苦い笑みを浮かべた。
一方その頃___
「……おや…ふふん。"しほ"ちゃん、君の兄……京くんが来たっぼいよ?」
「……………」
「やだなぁ、そんなに睨まないでよ」
「……………」
「さて、そろそろおもてなしへと洒落込もうか…」
不吉そうな男の存在があるにしても。
兄妹の再開の時は近い。
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