四十四話 ページ4
いつまでも土下座の姿勢を保ち続ける僕に、ついに怒乃さんの父親が無理矢理僕の額を床から引き剥がした。
「…はは、負けたよ。根気勝負では自信あったんだけどなぁ」
と、なんともあっさり僕の要望を飲んだ。
怒乃さんの父親は、立たないのかという視線を僕に向けてきたが、僕は正座の姿勢を崩さなかった。
少しでも誠意を見せる為だ、苦痛ではない。
そんな僕の姿を見た怒乃さんの父親は、軽く笑った。
「まあ、津露町なら許されるよ、君みたいな人が一人くらい、いても大丈夫だろう」
そう、怒乃さんのの父親が言うように、津露町は少し特殊な町なのだ。
津露町は犯罪件数が極端に少なく、新人の警察官やヘボり過ぎた警察官を鍛え直す為の町になっていて、故に未熟な警察官が多い。
更に、過去にも僕の要望と同じように警察官ではない人物が警察官として仕事を行ったという事例がある。
本当に不思議な町だ。
町全体が警察官教習の為の施設のようなイメージ。
「多分署長も理解してくれるだろ……どうせ津露町の誘拐事件なんて不倫相手に奪われた子供を奪う元親だったりする、突発的な理由のものばかりだもんね」
軽く笑い飛ばした怒乃さんの父親は、僕に向かって手を差し出した。
「明日、またうちの家に来てくれないかな。一緒に警察署に連れていってあげるよ」
僕はつい笑みを溢し、差し出された大きな手を掴んだ。
余談だが、僕は立ち上がったものの、足が痺れて倒れるという醜態を晒した。
更にしばらく怒乃さんの家で足が回復するまで居座ることになってしまった。
うむむ、反省。
8人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ