【銀魂】ありがとう、愛しい人よ

番外篇 「sweetie baby」 ページ43

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『あーうー』



なに言ってるのか分からねェ喃語を喋りながら俺に向かって手を伸ばす。短くて小さく、それでも餅のような腕。

必死になって俺の服にしがみつき、よじ登ろうとするコイツが転がらないように一応背中に手を添える。



俺の頬を物珍しそうに突いたり叩いたりした後は、楽しそうに笑っては結局疲れ果てて眠くなって泣きじゃくるのだ。


赤ん坊は忙しい。泣いたり寝たり食ったりと、表情がコロコロと変わるから不思議だった。

銀時は泣いてるコイツを見ては周囲をウロチョロして監視している。まるで俺が泣かしたと言いたげに睨んでくるため、Aの言った通り本当に兄弟のみたいだ。



『あ、寝そうですか？』

『多分な』



背中をリズムよく叩いてやるとすぐに眠ってしまう。今にも落ちそうな重たい瞼から見える硝子玉のような潤んだ目は、俺をぼんやりと映していた。


耳をすますと気持ちの良さそうな寝息が聞こえ、背中は小さく上下している。ほんの少し前までは腹にいるくらい小さかったのに、今はもう俺の枕と同じくらいの大きさだ。


少しずつ大人へと変わっていくスピードが早く、もう少しくらいゆっくり成長してもいいのではないだろうか。



『抱っこ、交代しますか？』



Aが差し伸べた手。しかし俺は首を横に振るう。普段は仕事で家にいない上に帰ってくる頃にはもう眠っている。休日ぐらいしかこうしてたくさん触れ合える時間がないため、抱っこできる時にしてやりたいのだ。


いつかコイツも自分の二本足で立つ日が来る。その時、手を離さずに歩いて公園なんかに連れて行きたい。

だが悪戯っ子のように俺から離れて駆け、早く早くと俺を急かすコイツの未来を思い描いては愛しくなる。



『A』

『なんですか？』

『ありがとな』



脈絡のない「ありがとう」。だが、どうしてかコイツを見ているとAも愛しく思う。Aは小首を傾げると、コイツと同じでニッとした笑顔を浮かべた。

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