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【長編】答えは温もり 弐 ページ2

「……はは、藤原さん、だ。すみません、こんな夜に」
「いや。玄関先じゃ寒いだろう、入るといい」

改めて彼の姿を一瞥して、綺麗に濡れているものだ、と思った。
頭からつま先まで同じような濡れ方をしている。
――つまり、雨が降ってきたというのに、どこを庇いもしていない。

普通なら多少なり頭や肩やらの濡れ方がマシになるものだ。
誰であろうが、雨に濡れることなんて不快でしかないんだから。
そんな定石に合わない彼の濡れ方はつまり、雨の中長らく立ち竦んでいたことを示している。

広めに玄関扉を開けて促すと、オレンジ色の光が漏れて一之瀬探偵を柔らかく彩った。
はじめは“いえ、すぐに帰ります……”などと力なく言い張っていた一之瀬探偵だったが、
「せっかく来たんだ。仕事の一つでも手伝って行ってくれ」と微笑みかけると、
非常に恐縮した、おずおずとした足取りで玄関扉をくぐってくれた。
床が濡れれば短い悲鳴を上げたが、そんなものは客が来るたび濡れているよ、と笑ってやった。

「――書類仕事だ。そんな濡れた体じゃ紙が濡れる」
「へ……あ。すみ、すみません。すぐ、すぐ拭きます……」
「頼むよ」

……でなければ、風邪をひいてしまう。

投げ渡したタオルで一生懸命体を拭う様子に目を細めながら、
こちらはこちらで彼を迎え入れる準備を進めていく。

砂糖と牛乳を多すぎるほど混ぜ入れた淡い色のカフェ・オ・レに、
癖のない口当たりの菓子を幾つか添える。
こんな調子じゃ食欲も沸いていないだろうが、かといって腹が減っていると休めないものだ。
菓子でもなんでも、カフェ・オ・レを飲むついでに口に運べばいい。
毛布はあっただろうか、と軽く周囲を見回したが、どうも家のほうに持って帰ってしまったようだ。
……かといって、火鉢を使うのも大げさだな。
比較的分厚い素材のケープがあるから、それを使ってもらうか。
肩を暖めるのは不眠と孤独に良い。

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小春(プロフ) - 珈琲さん» 企画主様!閲覧ありがとうございます。(派生作品のご連絡遅れてしまってすみません……!) (2022年8月20日 18時) (レス) id: fb7c2aa482 (このIDを非表示/違反報告)
珈琲(プロフ) - 描写が素晴らしすぎる…!「その赤は激情か」お気に入りです。 (2022年8月20日 17時) (レス) @page2 id: 3ddce89f00 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小春 | 作成日時:2022年8月11日 21時

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