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そして夜。
今日は時間が過ぎるのがあっという間だった。
入野さんがいないうちに肌もきちんと綺麗にしたし、覚悟もそれなりにしているつもりだ。
入野さんは既にお風呂から上がっていて、私も今ルームウェアを着てリビングに向かうところだ。
もう心臓が高鳴っていて、裸足で廊下を歩くことさえ何故か緊張してしまう。
「お、お風呂、あがりました」
「ん、おかえり」
まあ座りなよ、と言って入野さんが手で軽く叩いたのは入野さんの膝の上。
私が硬直していたら、「ちゃんと俺と向き合うように座ってね」と追加で指示が入った。
入野さんの膝を跨ぐような形になってしまうことに躊躇しながらもそっと腰を下ろすと、当然ながら入野さんとばっちり目が合う。
ふいに、入野さんがテレビを消した。
「A、緊張しすぎ」
「だ、だって、初めてなんですもん・・・」
顔を合わせるのが恥ずかしくて、入野さんの胸に倒れ込んだ。
そうしたら、彼の心臓もいつもより速く動いていて。
そのことにはっとして顔を見上げたら、少し顔を赤くした入野さんが、「大人気ないから見ないで」と言いながら私の目を掌で覆ってしまった。
入野さんも、緊張してくれてるんだ。
なんだか嬉しくなって、私の目を覆っていた手を捕まえて指先に口付けをする。
しかしその手は私の両手から逃れ、代わりにすぐ私の顎をすくってしまった。
「・・・だめ。口にして」
「・・・っ、」
長い夜が、始まろうとしている。
私は、目を閉じて少し背筋を伸ばして、入野さんの唇に自分のそれを重ねた。
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アヌ - すごく面白いです!続きがとても気になります。もう更新する予定はないのでしょうか?大変だとは思いますが、頑張ってください(^-^) (2023年2月18日 13時) (レス) @page38 id: dccb579fc6 (このIDを非表示/違反報告)
clarinetloveand(プロフ) - この作品が初めてできた時から今まで読み続けていました。更新とても楽しみにしております。 (2022年3月12日 22時) (レス) id: 0c834e660b (このIDを非表示/違反報告)
あいり(プロフ) - 面白かったので続きを是非書いてください。完結まで是非書いてください。お願いします! (2020年7月18日 9時) (レス) id: f0acef49cf (このIDを非表示/違反報告)
莉兎(プロフ) - 悠さん» 悠様、コメントありがとうございます!ゆっくりではありますが更新していきますので今後も引き続きお楽しみくださいませ。応援ありがとうございます、頑張ります(´˘`*) (2019年7月9日 23時) (レス) id: ba3d0050a9 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 面白くて1日で全部読んでしまいました!!今後の展開が気になって毎日ソワソワしてますw大変だとは思いますが頑張ってください!!! (2019年7月8日 20時) (レス) id: 7c7911550e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:莉兎 | 作成日時:2019年6月14日 23時