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「そこ、立って」
「は、はい」
玄関へ続く開き戸の前の、家具が何も置かれていないスペースに立たされる。
入野さんは、リングケースを持って私の前に跪いた。
「左手出して」
黙って左手を出すと、入野さんが薬指の付け根にキスをする。
部屋着に着替えなきゃ良かった・・・なんてどうでもいいことを考えていたら、入野さんが先ほどのリングケースから指輪を取り出して。
私の左手薬指にはめてから、もう一度キスをした。
そして、そのまま私の顔を見上げて、目を見ながら言う。
「A、俺と結婚しよう」
「今すぐとは言わない。俺はAが大学卒業してからがいいかなって思ってるんだけど」
「ちゃんと待つから。俺以外は駄目」
そんな入野さんらしい言葉を。
わかってはいるつもりだったけど、むしろ、立たされた辺りから「プロポーズしてくれるのかな?」なんてなんとなく察してはいたけれど。
それでも受ける重みは想像とは遥かに違って。
胸も顔も熱くなって、何もしていないのに涙が溢れて止まらなくて、力が入らなくなってしまった私は、床に座り込んだ。
「返事は?」
私の涙を袖で拭いながら、入野さんは優しく問う。
そんなの、ひとつに決まっているのに。
言わせるなんて卑怯だ。
「・・・っ、もちろん、喜んで」
涙でぐしゃぐしゃな顔だけど、嗚咽でめちゃくちゃな言葉だけど、それでもその言葉を聞いた入野さんは今まで見たことのないくらいに幸せそうに笑って。
目に涙が滲んでいるように見えたけど、それを確かめる前にぎゅっと強く抱きしめられた。
「・・・ありがとう。A・・・ほんとに、本当に、愛してる」
「わたしも、入野さんのこと、愛してる」
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アヌ - すごく面白いです!続きがとても気になります。もう更新する予定はないのでしょうか?大変だとは思いますが、頑張ってください(^-^) (2023年2月18日 13時) (レス) @page38 id: dccb579fc6 (このIDを非表示/違反報告)
clarinetloveand(プロフ) - この作品が初めてできた時から今まで読み続けていました。更新とても楽しみにしております。 (2022年3月12日 22時) (レス) id: 0c834e660b (このIDを非表示/違反報告)
あいり(プロフ) - 面白かったので続きを是非書いてください。完結まで是非書いてください。お願いします! (2020年7月18日 9時) (レス) id: f0acef49cf (このIDを非表示/違反報告)
莉兎(プロフ) - 悠さん» 悠様、コメントありがとうございます!ゆっくりではありますが更新していきますので今後も引き続きお楽しみくださいませ。応援ありがとうございます、頑張ります(´˘`*) (2019年7月9日 23時) (レス) id: ba3d0050a9 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 面白くて1日で全部読んでしまいました!!今後の展開が気になって毎日ソワソワしてますw大変だとは思いますが頑張ってください!!! (2019年7月8日 20時) (レス) id: 7c7911550e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:莉兎 | 作成日時:2019年6月14日 23時