034 ページ35
.
体を揺すられて目を覚ます。
視界には入野さんと、自分の家にはない天井。
「起きた?俺そろそろ仕事行くから」
家にあるもんは酒以外何でも食べていいから、午後までは家にいて。
そう言って寝癖でぼさぼさの私の頭を撫でた。
「・・・お仕事、いっちゃうんですか」
「すぐ帰ってくるから、ね、待ってて」
「・・・うん・・・」
寝ぼけて頭の回らない私に、入野さんは「かわいいなぁ」と笑って頬にキスした。
朝から心臓に悪い。
のそのそと起き上がると、これまで静まっていた家中にインターホンの音が鳴り響いた。
「あ、やべ、マネージャーだ」
「えっ!?」
「しっ、静かにしてて」
入野さんは私に洗面所にいるように指示すると、私の靴を靴箱に隠してからドアを開いた。
「あ、おはようございます」
「あ、じゃないわよ入野くん!下で待ってるってLINE送ってから10分経つけど!」
「あ〜、すいません、ちょっとスマホどっか行っちゃって」
「またなの!?」
賑やかな声が聞こえてくる。
入野さんは「なんとなく在り処予想ついてるんで、すぐ行くから待っててください」と言うと、ドアを閉めた。
そして、洗面所のドアを開ける。
「そういうことで、俺もう出るから」
いい子にしてて、とまた次は額にキス。
なんだかちょっと入野さんのペースに乗せられている気がして悔しい。
「じゃあ、行ってきます」
「待って、入野さん」
だから、
「いってらっしゃい、・・・自由さん」
入野さんの手首を掴んで引っ張って、そう言ってから唇に触れるだけのキスをした。
私だって相当顔が赤かったかもしれないけど、入野さんも珍しく耳まで赤くなっていて。
少し勝ち誇ったような気になりながら、入野さんを見送った。
.
127人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:莉兎 | 作成日時:2019年4月2日 16時