続き ページ6
「青春やなぁ。けど、Aちゃん。この世に叶わなくて良い恋なんて無いんやで」
『叶わなくて良い恋…』
良い年した大人が夢を語っているのは馬鹿馬鹿しいかもしれない。けれど、大先生は彼女の恋を純粋に応援したかった。直感的にこの恋は良い恋だと思ったからだ。それ故に叶えさせてやりたい。
「約束や、高校卒業までに彼に想いを伝えるんや」
『む、無理です。そんな度胸ありません。付き合う気ありませんから』
「じゃあ、想いを伝えるだけでええ。伝えるだけや」
『伝えるだけ？どういう事ですか？』
「そのまんまよ、好きですって言うだけ。付き合うまでしなくて良いけど貴方のことが好きなんですって言うだけでええねん」
『相手に迷惑では』
「それで、迷惑だと思う奴はそれまでの奴って事や。少なくともAちゃんの彼はそんなんで迷惑とか思うような彼なん？」
『…………』
Aは沈黙した。大先生の提案は強ち悪く無いと思った。それくらいなら、できるかもしれないと自信が沸々と湧いた。
『参考にします。有難うございました』
「お、約束やで〜。卒業までが楽しみやなぁ。タイミングはAちゃんに任せるで」
『はい、約束です』
それから、Aはキャラメルコーヒーを飲みに月2、3回このカフェに通うようになった。大先生が手が空いている時に相談に乗ってもらった。部活や学校の事をたくさん話した。
学生生活なんてあっという間に時間が経つ。気づいたら卒業の時期になった。大先生は最後まで応援してくれた。後は伝えるだけ。
卒業式の後、彼に告白した。
好きです。
ずっと、あなたの事が好きでした。
付き合ってとかそういうのは無いから。
ただ、ずっと私がこう思ってたのを今伝えたかっただけだから。
自分勝手だけど
もう部活終わったし、会う事も無いだろうから今言った。
………ただ、それだけだから。
私に大切な思い出を作ってくれてありがとう。この思い出だけで十分なんだ。
じゃあね。
Aはそう言ってその場を逃げるように去った。彼がどんな顔をしていたのか怖くてよく見れなかったけれど、心の中は達成感でいっぱいだった。
伝えれた。こんな私が大切な人に想いを伝えれたんだ。嬉しかった。その日は走って家に帰った。
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作者名：雪だるま | 作成日時：2019年10月23日 21時
