続き ページ13
『ほんと、私とことん幸せになる素質がないのかも』
「そんな事ないやろ。なんでそんなに引け目に考えとるん？そこまで自信がないんか」
『恐らくは…』
「要は自分が幸せになる自信がないって事やな！よし、そんな君に俺が特別なカクテルを作ってやるで」
ちょっと待っとってなと言って、そそくさとゾムは厨房へと消えていった。そして、出てきたのが綺麗な翠色のスパークリングカクテルだった。
「おまたせしました。エメラルドスピリッツァーでございます」
カランと氷とコップのガラスが当たる音と共に出てきた翠色のカクテル。初めて見る宝石のような輝きを放つカクテルにAは目を奪われた。
『綺麗な色…』
「やろ？俺、緑系のカクテル得意やねん」
Aは初めて見る鮮やかな色のカクテルに感動した。緑色のカクテルなんてあまり頼まないから新鮮だった。
一口飲むとその味はみずみずしいハスカップの味がした。それに、心地よい炭酸により頭の中がスッキリする様だ。
『……美味しい』
「そうか、喜んでもらえて良かったわ。なぁ、お客さん。そのカクテルの名前エメラルドって付いとるやろ。エメラルドって宝石やん。石言葉っちゅうもんあるの知っとる？」
Aは花言葉は知っていても石言葉というものまで存在している事を初めて知った。Aはふるふると首を横に振った。
「エメラルドの石言葉はな癒しや。まぁ、他にもあるんやけど……やからな、心を落ち着かせる為に緑の小物とか付けるとええねん。そうするとな、心に余裕ができるんや」
ゾムは右腕を出して、皮のブレスレットを見せた。色はもちろん緑だった。Aはこの緑がとても彼に似合ってると思った。それに最初に声をかけられた時、優しそうな人だと感じたのは彼が緑色好きだからなのかと思った。
「特別にあんたにええこと教えたる」
『はい』
「幸せになる勇気を持つ事や』
ゾムはウインクをして人差し指を口に当てて言った。まるで、アイドルみたいな仕草に不覚にもときめいてしまった。
『幸せになる勇気？』
Aは小首を傾げて復唱した。正直、意味が分からなくてピンときていない。
「せや、人生にはチャンスがある。そん時を絶対逃したらあかん。恋愛でもそうや。今回、フラれた彼氏はたまたま幸せになれる相手やなかったんや。だから、今度来るチャンスは逃すんやないで。チャンスは何度も来るもんやないから」
Aはゾムの言葉を気づいたら真剣に聞いていた。
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作者名：雪だるま | 作成日時：2019年10月23日 21時
