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9、金さえあれば何でも出来る ページ9

××



重い沈黙が周囲を包んだ。
私達の様子を見ていたお客さん達は息を飲んで成り行きを見守っている。国木田先輩は射抜くように、見定めるように、私を見ていた。私は黙って見つめ返す。ここで目を逸らした方が負けだと思ったから。

沈黙を破ったのは太宰先輩だった。


「そうだよ、国木田くん。
これでは完全に私達が悪者みたいになっている。
それに、君がやると情報収集が尋問になると社長にいつも云われているだろう」


ふん、と国木田さんは私から視線を外し、ゆっくりと立ち上がった。胸を撫で下ろす。これ以上続いていたら、間違いなく私から逸らしていただろう。それくらい彼の威厳は圧倒的だった。


「それで?」


太宰先輩は満面の笑みで中島先輩に話を促す。
その笑みが国木田先輩の睨みよりも恐ろしく感じたのは私の気の所為(せい)だろうか。


「……うちの孤児院はあの虎にぶっ壊されたんです。畑も荒らされ、倉も吹き飛ばされて……死人こそ出なかったけど、貧乏孤児院がそれで立ち行かなくなって……口減らしに追い出されて」


中島先輩は目を伏せる。
孤児院のことを語る彼の横顔は辛そうだった。
そっと中島先輩の手に触れる。
彼が握り返してくれるのが分かった。


「それで小僧。`殺されかけた´というのは?」

「あの人食い虎、孤児院で畑の大根食ってりゃいいのに。ここまで僕を追いかけてきたんだ!あいつ、僕を追って街まで降りて来たんだ!」

「……それ、いつの話?」

「院を出たのが二週間前。
川であいつを見たのが四日前。
……そういえばAちゃんと出会ったのもあいつを見た翌日だったような……」


中島先輩はもしかして、という風に私を見た。
いやいや虎はあなたですからね、と云いたくなるのをぐっと堪え、彼の怪訝そうな視線を受け止める。


「敦くん、Aちゃん、これから暇?」

「……猛烈に嫌な予感がするのですが」

「私もです……」


「虎探しを、手伝ってくれないかな」


私達の嫌な予感は見事に的中した。
太宰先輩はニッコリと威圧的に笑う。

……要するに `餌´ ということだ。
まぁ餌も何も虎は中島先輩なのだが。
しかし、私は中島先輩が虎に変身するところはもう見たくない。行きたくありません、と云うと太宰先輩は「報酬が出るのになあ」と残念そうに呟いた。


「報酬が出たとしても私達は、」

「おいくらですか!?」


太宰先輩はこれ見よがしに紙を見せる。



結果、中島先輩が金銭欲に敗北した。



**

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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

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