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【番外編】犬ですが ページ50

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おれは七竈家で暮らし、七竈家の玄関を寝床にしている犬です。

ある日、この家の大切な嬢さんである七竈Aが旅に出た。美事だった黒髪を茶色に染めたAは左様なら、とおれの頭を撫で去って行った。もう二度と逢えないかもしれない、とおれは思った。


家の主であるじいさんが帰ってきた。
その隣にAはいないので、ああ行ってしまったのだなと悟る。じいさんは妙に晴れやかな面持ちでこれで良かったんじゃ、と云った。


「……行ったかい」


部屋の奥からばあさんが出てきた。
このばあさんは何時も気難しい顔をしているが、今日は一段と険しい表情だった。


「あぁ……Aなら行ったぞ……お前もさよならくらい云ってやった方が良かったんじゃ……」

「嫌ですよ、あんな子。結局あの子も旅人なんだわ……似てほしくないところばかり母親に似てしまって……」

「でも、旅人であるAの母親を産んだのはお前じゃろう」

「ふん……でも十八になるまでの自由ですよ。
十八になったら意地でも此方へ連れて帰りますから。あの子が自由な旅人になるなんて、赦しません」


ばあさんは顔を歪め、階段を登って行った。
なんだかムカムカしたおれは、ばあさんの背中に吠えた。うぉおん!うぉぉん!と。


でもふと、ばあさんも辛いんだろうなぁと冷静になり我に返った。

昔からAに逢いたがる奇妙な連中が来ていた。Aが学校や買い出しに行っている間に何人もの客人がやって来るのだ。訪ねてくる奴らは決まって、どれもこれもこの平凡で静かなこの町を荒らすような、ばあさんが嫌う異質な連中だ。

数年前には霧のように白い長髪の研究者と名乗る不審な男も来たし、死の匂いを纏った黒髪の男や、見目麗しい淑女(レディ)も来た。とにかく、本当に色々なやつらが。じいさんはなんとかあの手この手でAが帰ってくる前に客人達を追い払い、おれは無礼な客人たちに吠える。ばあさんはそれを黙って見ていたが、もう嫌気が差していたのだろう。


「……全く……可愛そうだなあ……」


じいさんは泣きそうな声で俺の毛に顔を埋める。
そうだよな、頑張ってきたもんなじいさん。
ずっとAのこと守ってきたもんな。

だけど、じいさんに抱きつかれるなんて、まったくいやになっちまうよ。……なあ、Aよ。



**
こちらは続編です。

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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

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