40、ただいま乱心中につき ページ40
××
「……くく……はははっ……!
君が魅了の異能の持ち主でさえなければ今、私は此処で君を殺していただろう」
A先輩は片目を押さえながら声を荒げた。
けれど成る程。A先輩を"乱心"させてしまったのは私の発言の
A先輩はシャッフルを終えたトランプを一枚ずつ配っていく。
「あの、婆抜きって二人でやるのですか?」
「ああそうだが。何か文句でもあるか」
婆抜きというのは二人でやるものなのだろうか?否、二人でも出来るが二人だとどちらが婆を持っているかすぐ分かってしまうし誰が婆を持っているのだろうという高揚感を味わえないではないか。しかし、これ以上彼を乱心させるわけにもいかないので私は仕方なく押し黙った。
私がそんなことを考えているうちにトランプが配り終えられた。その中に婆はない。ということは婆を持っているのはA先輩だ。
客観的に考えてみると、ポートマフィアの人間と婆抜きをして遊んでいる探偵社事務員という今の図はなんと可笑しいことだろう。
「あ、」
婆を引いてしまった。
愉快げに口許を歪めるA先輩に苛立ちを覚えながらシャッフルをする。A先輩はまるで私の手札を見透かしているかの如く、不自然なまでに婆を引こうとしない。
*
「……分かりやすいな」
「……ありゃバレバレだよな」
冷や汗を流しながら手札を見つめるAを見て、Aの部下である男達は溜め息を吐いた。二人婆抜きというあまりに簡単な
ついにAの手札が一枚になる。
Aの手元に残るのは二枚の手札。どちらかが婆だ。AはAの表情を注意深く観察しながら一枚の手札を引いた。Aは愕然と目を見開く。
負けた。
全員がAの勝利を悟った。
しかし、
AはAの手札を一枚引くと、テーブルに手札を置いた。彼女の手札は二枚揃ったハートのAだ。
「っ……!」
ジョーカー、つまり婆を掴まされていたのはAの方だった。
「A先輩が敗北した理由は二つ。
一つは私の"表情"を信じ過ぎていたこと。
もう一つは"婆抜き"を甘く見ていたことです」
Aは柔らかく微笑んだ。
そう、AはAのコロコロと変わる表情を信じきっていた。普段のAなら演技の可能性も視野に入れ、もっと冷静に考えていただろうに。
**
3768人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ