4、旅は道連れ、世は情け ページ4
××
花のような少女の香りに、中島敦は目をゆっくりと開けた。視界に飛び込んできたのは一人の少女だった。艶やかな栗色の髪に赤い瞳。美少女。敦の脳裏にそんな単語が浮かんだ。
「……うおおお！？」
敦は目を見開き、盛大に仰け反った。
だ、だれですかあなたは！震える声でそう訪ねる。すぐにAは察した。彼には昨夜の記憶がないのだと。
「私、あなたに襲われたのですが」
正確には“襲われかけた“だが、そんなことはAにとって、どうでもよかった。Aの言葉を聞くなり、彼は見ていて愉快なほど分かりやすく狼狽し
───見事な土下座を決め込んだ。
「すみませんでしたッ！！あの、ぜんぜんっ記憶がないんですけどっ……でも、あまりの空腹に耐えられなくて金目の物を取ろうと襲いかかってしまったのかもしれませんっ！」
彼は自分が虎になった記憶が完全にないようだとAは完全に確信した。しかし、彼が虎だと気づいていないのなら黙っておいた方が良いだろう。変なことを云ってまた虎の姿にでも変身されたらたまったものではない。
「あなた、お名前は？」
「な、中島です……！中島敦です」
「私は
歳は今年で十七になります。中島少年、お歳は？」
「じゅ、十八です！」
十八、という事は自分よりも一つ歳上だ。
では中島先輩ですね、とAは屈託なく微笑む。
「せ、先輩とか初めて呼ばれました。
あのぉ……Aさんはどうして此処に？」
「私、無一文なのですよ中島先輩。
トランクの中にあるのは服に、双眼鏡に、一冊の本だけなのです。寝床を探していたらあなたに襲われて。私が気絶させましたけれど」
「強いですね……」
Aの嘘にも気づかず、敦は身体を震わせた。
「それで、見たところ中島先輩も私と同じような状況下に置かれているようですが何故此処に？」
「えっと……孤児院を追い出されたんです……
それで、行く宛がなくて……
「Aで良いですよ、中島先輩。
ここはひとつ。同じ環境下に置かれている者同士、仲良くしませんか？」
Aは優しく微笑み、彼に手を差し出した。
敦を旅に巻き込もうと思ったのだ。
虎になること以外は人畜無害そうな少年だし、何より
Aの裏の考えも知らず、「実は一人だと心細かったんです！」と敦は嬉しそうに手を握り返した。
***
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黒灰白有無％(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです！！賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます！！ (9月8日 3時) (
レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←？ - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます！！七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
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