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2、人食い虎と異能力の開花 ページ2

××



ヨコハマに到着したのは、夕方頃だった。
列車から降りた私はトランクを持って、ヨコハマの街を散歩する。薄汚れた都会の空気がした。


「おい賢治、太宰、見つかったか?」

「いえ全然。自動販売機の下や車の下も見てみたのですが、太宰さんはいませんでした!」

「お前は太宰を何だと思っているんだ」


麦わら帽子を被った少年と、眼鏡をかけた厳格そうな男性とすれ違う。その二人の会話があまりにとんちかんだったものだから、思わず笑みが漏れた。ヨコハマは不思議なところだ。

自動販売機、という言葉を聞いたからだろうか。なんだか無性に何かが飲みたくなった私はスカートのポケットに手を入れた。


「……ない」


お財布が、ない。
そういえば列車の中で機内販売のパンを頼んだ。それからポケットに入れたつもりだったが、もしかしたら置いて来てしまったのかもしれない。しかし、もうあの列車はまた違うどこかへと出発しているだろう。


 こうして私は無一文になった。




*


とりあえず寝床を探し、鶴見川の辺りを歩いていると低い、唸り声が聞こえた。人間の唸り声ではない。

 それは、獰猛な獣のような唸り声だった。


私は呼吸を止める。唸り声が近づいてくる。

ゆっくりと、背後を振り向く。


「……っあ……!」


そこにいたのは、虎だった。

白い毛並みを逆立て、私を見ていた。

虎は光に喩えられる速度で、私に向かって直進して来た。目を閉じる。死を覚悟した。


しかし、いつまで待っても、痛みは来ない。
目を開けると、虎が私の前で座っていた。
さながら愛犬が飼い主に見せる `お座り´ のようだった。


「……え……?」


これが犬や猫だったら可愛かったかもしれない。しかし、私の目の前にいるのは紛れもなく、虎だった。ヨコハマの動物園には虎がいるのだろうか。そんな事を思いながら虎を見つめていると今度は青白い光が、虎を包み始めた。


「……」


今度は何が起こるのだろうかと、じっと観察していると確かに虎だったはずの姿が人間に変化していた。これには流石の私も絶叫しそうになる。


「……ぐうう……」


少年はすやすやといびきをかいて、眠っていた。
私は地面に落ちていた枝で少年の身体をつついてみる。反応がない、ただの屍のようだ。


「……よし!」


私はこの少年を私の道連れにすることに決めた。


しかし、後々私は気づくことになる。


道連れにされたのは、私の方なのだと。



**

3、純情と憤怒の少女→←1、いざ、ヨコハマへ



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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

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