＊ ページ10
吉澤「…共犯者？」
宮近「うん、何かさ、その「龍也様」って呼ばれてたのとはまた違う映像なんだけど」
異国のお偉方が済むような洋風の豪華な部屋の中で、電気もつけず月明かりの射す部屋の中で、その吉澤に酷似した人物は
「しめ、共犯者になろう」
という言葉を零していたのだと言う。
吉澤「待って待って、そこは「しめ」って呼んでたの？」
宮近「うん。でも閑也の着ていた服は変わってなかったよ。目の色も焦げ茶色だった」
吉澤「んん…？」
確かに奇妙な夢だ。前半の「龍也様」呼びはまだしも、「共犯者」？
吉澤「…それ何の夢？」
宮近「でもどっからどう見ても、罪を科す前日か直前かのようにしか見えないよね」
吉澤「2人して咎人になろうとする夢？…だとしたら、嫌な気持ちにはなるか」
宮近「しめに聞いてみる？」
吉澤「何で？この夢を見た理由なんてしめにわかんないでしょ」
宮近「これが本当に夢なのか」
深緋色の瞳がこちらを突くように向けられた。
吉澤「…どういう事？」
宮近「例えば、…生前の時の、事とか」
吉澤「…生前」
そう、それがもし、七五三掛がよく「思い出してもいいもんじゃないし、思い出さない方が幸せだ」と散々言っていた生前の事だとしたら。
吉澤「…聞いて、答えてくれるかな、こいつ」
宮近「答えてくれなさそうな気はするけど…でも、気になるじゃんか。あんなに黒い靄を纏わせるような出来事」
吉澤「それは…そうだけど」
吉澤の口からは当分聞けそうにもなかった。
もし仮に、さっき宮近が見たものが「生前の事」だとして、そうしたらきっと自分は七五三掛に何らかの罪を背負わせたという事になる。
それを知るのは、少し怖い。
宮近「…さりげなく、俺が聞いてみるよ」
そんな吉澤の思考を汲み取ったのか、宮近が優しく声を吐いた。
吉澤「……うん、ありがとう」
その言葉に、吉澤はそんなありきたりの言葉しか返す事が出来なかった。
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作者名：湊都 | 作成日時：2020年9月1日 0時
