明朝、朝陽が射す方へ (ページ4)

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第一話ページ4

松田｢お団子いりませんかー！｣
松倉｢僕たち頑張って作ったのー！｣
人に化けた小狐たちのどこかあどけない声が響く境内は、この日年に数回虎蛇神社に人間が訪れる日だった。

朝からふんすふんすと気合いを入れてお団子を作っていた松倉と、相も変わらず大きな声で薦める松田にほっこりとしながら、川島は参拝客に挨拶したり誘導したりと大忙しだ。

宮近｢…｣
本堂で祈りを捧げる人越しに川島を見る宮近は、目の前の人間たちの邪気に舌なめずりする白蛇様をいなしながらどこか上の空だ。

人間に自分の姿は見えていない。
いや、正確に言うなら川島以外の人間に、か。
だから宮近が上の空とはいえ誰もそれを咎める人なんていない。
…そもそも、仮に見えてる人間がいたとして、上の空になっていたとしても｢神様だから｣で済まされてしまうのだろう。

邪気が黒い靄として視える、そしてそれが食物とする｢蛇神｣にとって、目の前にあるのは好物だ。
…実際は宮近の、というよりは白蛇様の、なのだが。
それを目の前にお預けされているのだから、白蛇様の機嫌は少しづつ悪くなってくる。

宮近｢…いいよ、食べようか｣
そう彼が呟いたのは、人が増えて、塵も積もって山となった黒い靄が川島の姿を覆い隠した時だった。
白蛇様が靄を食している間も、宮近はずっと考え事をしている。
言わずもがな、川島の事である。

宮近は川島が不思議でならない。
というのも、先述したように宮近は｢神様｣である。
人間の信仰対象とも言えよう、言わば｢人でない｣｢神格的な｣存在である。
それは宮近自身も重々承知している。
たまに｢人間と仲良くしてみたいなぁ｣なんて思う事はあったが、神社にいる面子が楽しいからいいやと割り切っていた。