第六話 ページ24
川島「ちゃか」
頭上から聞こえてきた声で目が覚める。
朝の日差しが差し込んできて眩しい。
川島「おはよう、ちゃか」
宮近「…おはよ」
神様である宮近は、寝転んで寝ない。
御本尊の祀られた像の前で、胡座をかいて眠る。
それで休まるのか?と聞かれればそれはまあ人間では無いので、の一言に尽きる。
川島「目覚めはいい?」
宮近「わかんないよそんなの」
というより、そもそも神様である宮近に、睡眠は必要ない。
ただこうやって、目を瞑って、夜の風の音を感じながら、まるで修行僧のように心を無にするだけ。
宮近「如恵留は眠れてる?」
川島「うん。ちゃんと寝てるよ」
宮近「その割にはまた靄増えてるけど」
川島「…ここのみんなには隠し事出来ないなぁ」
罰が悪そうに頭を搔く川島は、「ちょっと最近眠りが浅くてね」と困ったように笑う。
宮近「当たり前でしょ、神様だもん」
川島「でも神様でもちゃかはちゃかじゃない。あんまり心配はかけたくないからね」
宮近「…そんな事言うの如恵留くらいだよ」
川島「そう?普通の事だと思うけどなぁ」
そんな事を喋りながら、広間の方へと向かう。
キャッキャと朝からはしゃぐ子狐たちの声が聞こえてきた。
宮近「大丈夫なの?」
川島「うん。最近は眠れるように薬草煎じて飲んでるから」
宮近「何かあったなら聞くよ?靄食べようか?」
川島「ううん、大丈夫。ちゃかは他の人たちの悩み事まで聞いてるんだから」
宮近「でも…」
川島「俺は大丈夫だよ。安心して。ちゃかも無理しないでね」
それ以上の心配の言葉は、広間に入るなりに飛び込んできた子狐たちの所為で掻き消されてしまった。
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作者名:湊都 | 作成日時:2020年9月1日 0時