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中村「わ、凄い甘い匂い…」
松倉「マジ?海人わかんの?」
松田「流石〜」
何の流石、なのかは置いておいて、掠めた木の実の匂いはどうやら子狐2匹には香らないようだ。
松倉「俺取ってくる!」
わさわさ、と木々の葉が不自然に揺れる音がする。
どうやら松倉が木に登っているらしい。
松田が隣でがんばれー!と言っているのが聞こえた。
半分呆れたように溜息をつきながらも、中村は松田に背負わされた籠を背負い直し、その手を引かれて更に甘い匂いのする方へと連れていかれる。
松田「海人!後ろ向いてそこにいて!俺と海斗が海人の籠の中にいれるから!」
中村「ねぇそれ説明が説明になってないの分かってる?」
松田「なんでー!だから!海人が後ろ向いてそこにいたら俺と海斗が入れるの!」
中村「俺もお前の傍らも「かいと」なんだよややこしい!」
松田「もー!翠里の海人が後ろ向いたら!千冬の俺と千秋の海斗が入れるの!」
わざわざ妖名を入れなくてもいい自分のところにまで言ってしまっているのに松田はきっと気付いていないだろう。
中村はぎゃーぎゃー文句を言いながら後ろを向くと、木の実が籠に入っていく感触を背中に受ける。
うるささは異常だが、この2人と一緒にいるのはあまり苦痛ではない。
というのも、心の声が聞こえる時何が苦痛かと言われた時に1番最初に出てくるのは「上っ面の言葉と本音が両方聞こえる」という事だ。
その分、松田と松倉は単純だ。口から出た言葉そのままが心の声で聞こえる。
ただただ騒がしいだけ。でもそれはいつだって変わらない事だった。
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作者名:湊都 | 作成日時:2020年9月1日 0時