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七五三掛と中村だけが知っている事。
自分たちの生前の事。自分たちがどうして妖になったのか、という事。
生前の事を完全に覚えている2人は、川島を見る度に申し訳なく思っていた。
ここにいる、虎蛇神社にいる全員は、昔同じ軍の小隊だった。
表向きの名簿から抹消された、隠し部隊。
色々あって国から逃げて、逃げて、逃げて、
…結局、今生き残っているのは御覧の通り川島だけだった。
何の因果か、輪廻転生というものが存在していたのか、その辺の事情はわからないが、川島を置いて先に死んでしまった自分たちは今妖なんていう超常現象を秘めた存在に成ってこの場所にいた。
生前の事全部を覚えている七五三掛と中村。
本当に小さい頃の事だけ覚えている松倉と松田。
何1つとして覚えていない宮近と吉澤。
――そして、未だ「人」として生き続ける川島。
七五三掛は、結局最後まで彼の傍に居続けた訳じゃないから、自分がいなくなった後川島がどうやって過ごしていたか、そもそも彼がここまで生きていられた所以は知らない。
ただ、あんなに隊全員を愛していた川島が、みんないなくなってしまった後に後追いしなかったのが不思議でならない。
…いや、後追いしてほしい訳ではないのだけれども。
軍医だった中村曰く、「宮近と川島はどっちか死んだら後追いする」なんて言われるくらいの状態だった。
生前の事を覚えている中村は、「俺は咎人だから」と言って生前の事に着いて話そうとはしてくれない。
だから結局、川島に対する謎はずっと残っているのだ。
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作者名:湊都 | 作成日時:2020年9月1日 0時