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真横に並んで歩くのはなんだか想像しただけでこそばゆくて、黙って彼の後ろをアヒルの子のようについていく。彼の方も、棒付きキャンディをもらうかもらわないかの話をして以降、一切口を開かずに無言で足を動かしていた。
視線の動かしどころが分からずにそれとなく地面を見つめれば、否応にも彼の足元が目に入る。からんころん、とどこか趣のある下駄の音。彼は同年代からしたら見慣れないそれを、何一つ気にならない様子で履きこなしているようだった。
長い間続く沈黙が気恥ずかしくて、必死に夜道に響く下駄の音に耳を澄ませてやり過ごしているけれど。それでも、沸き起こる様々な感情を抑えることは出来なくて、思わず心臓のあたりに拳を置いた。
あの人たち、佐野くんのお友達は無事に帰ることが出来たのだろうか。高校生たちとの喧嘩を引き起こしてしまった原因は私なのに、取り乱して泣いてしまって、ろくにお礼を言うことが出来なかった。虎柄のタトゥーのあの人の怪我は大丈夫だろうか。私が上手く立ちまわることが出来ていれば負わなかった傷だ。佐野くんの時間を使わせてしまっているのだって、本来であれば必要なかったことなのに。
深く考え込んでしまうのは悪い癖だけれど、この時ばかりは考え込まずにはいられなかった。先ほど上手く感情をコントロールできなかった反動で、やけに頭が冴えてしまっていた。ああ、申し訳ない。本当に、私という人間は。そう思ったところで、前方から「おい」と鋭い声が突き刺さる。
「何回溜息つけば気が済むの」
「へ」
「もう数え疲れた」
「ついてましたか…？」
「無意識なん…？」
「ごめんなさい……」
肩を窄めて項垂れれば、彼は「あーもう、ぺこぺこすんな」と呆れたように頭を掻いた。さっきから落ち着いて話をしようとするたびに空回りしてばかりで、あまりにも不格好な気がした。だって、仕方ない。こうして二人きりになるのは本当に久しぶりなのだから。しょんぼり、から立ち直れない私をよそに、彼は口を開く。
「あいつらのことなら心配すんな」
「え」
「慣れてる」
「慣れてる……！？」
「それに」
簡単にくたばるようなやつらじゃねーから。
その言葉から、一瞬では想像もつかないほどの信頼が築き上げられているのを感じる。絆、友情。私が早々に逃げ出してしまったもの。ねっとりと手触りが悪く、くすんだ色に見えていたそれは、かみさまの手にかかれば眩いほどに金ぴかに磨き上げられてしまうらしかった。
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まめ(プロフ) - 世河経さん» コメントありがとうございます！丁寧に読んでいただいたみたいでとても嬉しいです😭 これからもよろしくお願いいたします！ (2022年4月7日 11時) (
レス) id: e02a633284 (このIDを非表示/違反報告)
世河経(プロフ) - 久し振りに感嘆の溜息を吐いたような気がします……作品の持つ雰囲気に刮目しました！是非、更新頑張られてください！！ (2022年4月2日 12時) (レス) @page2 id: 1e6cb0271b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みな | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/nymn624
作成日時：2022年4月1日 21時
