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88話 ページ41








「……真壁、ごめん。その、ありがとう」
「んーん、気にしないで」


少し落ち着いたのか、松野くんの顔は少しだけ晴れていて明るさを取り戻していた




もう大丈夫そうかな、
私は、手当ての続きしていい?と聞いてまた顔に消毒の染み込んだガーゼを当てる



「いてーよ!」
「がまん」

ふっとふたりで吹き出した




「あんまり無茶しないでね、」
「……うん」
「私、心臓飛び出るかと思った」
「…………」


消毒が終わって、松野くんの傷口にガーゼ、絆創膏を貼っていく。右目には一枚だけ残っていた眼帯シールを貼る



「よしっ。終わり!」
「……本当にありがとう」
「1人で帰れる?送って行こうか?」
「ばか。そしたら俺はまた真壁の家まで送ることになるだろ」



場地さん、呼ぶ?と口から出ようとしたが、なんとなくこの松野くんの怪我には、場地さんが関わっている気がして言葉を引っ込め、玄関まで松野くんを見送る





「……その、真壁」
「ん?」
「…〜っ!さっきのは、友達としてだから、」
「さっき?」

「真壁を抱きしめてしまったこと!!」


玄関で靴を履いた松野くんが、振り返って顔を真っ赤にして叫んだのでびっくりしてしまう



そっか…そういえばさっき、松野くんとハグしていたな。あまりにも自然にやったことのため気に留めていなかった









先ほどまでの松野くんは、弱々しく震えていて、消えていっちゃいそうで、


守ってあげなきゃってなったから





「…ハグ、できちゃったね」
「は?」
「前にさ、松野くんとはできないって言ってたでしょ?」
「…あー」


「松野くんはただの友達じゃなくて、すっごく仲の良い大好きなお友達だから、ハグもできた」


我ながら恥ずかしいことを言ってしまい、最後にえへへと戯けてしまう

その瞬間、松野くんが再び私に抱きついてきた。玄関の段差でほとんど同じ目線にいる私の首に腕を巻きつけて首元に顔を埋めている。



「………もう一回」
「…ふふ。がんばれー松野くん」


もう一回なんて、抱きついた後に言ってくる松野くんが妙に幼く見えて、頭をわしゃわしゃと撫でて頑張れと伝える





「…頑張る」
「うん!」


首に松野くんの吐息がかかって擽ったかった









翌日、松野くんは学校に来なかった
きっとどこかで必死に頑張っているんだろう


私は寂しい気持ちをそっと胸に閉じ込めて、空席の隣を見つめた









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作者名:ミルクレープ | 作成日時:2021年6月17日 0時

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