君の笑顔が見られたら (ページ14)

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61話ページ14

万次郎side

パーが捕まった。ケンチンと意見が食い違った…
なんで分かってくれねーんだ
ケンチンは俺の一番の理解者だと思ってたのに、

俺はやり場のない怒りを抱えてむしゃくしゃしていた

俺の足は気づいたらAの家に向かってた
なんでかは俺にも分からなかった

ただ体が勝手に動いていた

「はーい…あれ？佐野くんだ。どうしたの？」

ちゃんとモニターで誰か確認してからドア開けろと何度も言ってるのに、全然聞いてくれない。なんでお前はいつも無防備なんだよって文句を言いたくなったが、Aの顔を見たらなんかもう全部どうでもよくなって、そのまま思いっきり抱きしめた

「わっ、佐野くん？」
「……………」
「…佐野くん？お家入ろ？ここ暑くない？」
「……………」

いつまでも無言な俺にこれ以上何か言ってくることはなくなった
それと引き換えに、小さな手が俺の髪を優しく梳かすように撫でてきた。

無音の時間が続く
外は真夏で暑いのに、ずっとふたりくっついていた。Aは右手で俺の頭、左手で背中を優しくぽん、ぽんと撫でてくれていた

Aのそばにいると、さっきまで苛立っていた気持ちが落ち着いてくる。不思議だ…話を聞いてもらったわけじゃない。俺が欲しかった言葉をくれたわけでもない。ただこうして俺の体に触れてくれるだけで、心が穏やかになる。

出会った時からそうだった。
Aと一緒にいると安らぎをもらえる。
とても心地良くて、ずっとここにいたい、そう思わせてくれる存在。どんな危険なことがあってもAに会えば俺は普通の人間に戻れる。

Aは俺の帰る場所になっていた

気持ちが落ち着いて、Aの家に上がりふたりで隣りあって座る。俺はAの手を握りながら、パーちんが捕まったこと。俺はお金でパーちんを出してあげたいと思っていること。ケンチンにそれを反対されて喧嘩したことを話した。Aは聞いている途中、泣きそうになったりしていたが、ずっと黙って聞いていた。

「…大変だったね」
「…………」
「佐野くんの気持ちも、龍宮寺さんの気持ちもどっちも理解できる。でも、その前に…その、タケミっち？くんは大丈夫なの？倒れたんでしょ？一回様子見に行った方がいいんじゃないかな、」

「……！」

Aはいつも視野の狭い俺に広い世界を教えてくれる

この後、タケミっちのお見舞い行ったことによりケンチンとも仲直りできたから、Aは平和の象徴だなと思った