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59話 ページ12

千冬side





明日から夏休みだ。今日は終業式、昨日は場地さんと団地の踊り場で夜遅くまで語り尽くしていたからすごい眠い。本当はサボりたかったけど、夏休みに入ってしまったら真壁に1ヶ月以上会えなくなるから頑張って起きた

あの日、集会に真壁を連れて行ったとき改めて俺の入る隙間はないと痛感した。真壁はびっくりするくらいマイキー君のことしか見ていなかった。俺だって特攻服着ていたのに…



もしかしたら、自分も似合っていると言ってもらえるんじゃとちょっとだけ期待していた






「松野くん、ギリギリだよ」
「昨日遅かったんだよ」


自分の机に荷物を置くと同時に隣で読んでいた本を閉じて俺の方に体を向けた真壁がおはようと挨拶をしてくる。珍しく今日は髪をお団子にしている。いつもは下ろしているのに、



「明日から夏休みだね〜」
「だな!真壁はどっか行ったりすんの?」
「友達と海に行く予定立ててるよ。松野くんは?」
「海いいな!俺は特に決まってないけど、川とか海行きたいよな」
「夏の醍醐味だよね」


やっぱり、真壁とふたりで話すの楽しいな…
川もいいな〜と頬杖をついて柔らかく笑う真壁を見て、心がふんわりと穏やかになる


マイキー君は夏休みでもたくさん真壁と会えるからいいな
俺も、会えたりしねーかな


連絡先交換したとき、夜中にメールして起こすなんてぬかしてたくせに、まず真壁からメールをもらったことすらない。あの日からずっと来ないかなと毎日結構期待して待ってるのに





「あ!夏といえば、花火だよね」
「まあよくやるよな」
「花火したいな〜」


俺は、少しだけ淡い期待を胸に抱き真壁に体を向け言い放つ



「……一緒にやる?」

耳まで熱くなっているのが分かった
好きな奴に花火誘うだけでこんなになるとかクソだせー


やっぱ俺も真壁に夏休み中も会いたい
マイキー君の彼女だから、こんなことダメなのは分かっている




でも、どうせ付き合うことはできないんだからちょっと会うくらいのことは許してほしい



「え、やろやろ〜!いつやる?今日やる?」
「今日!?」
「近所に空き地あったよね、あそこでやろうよ」


こんなに食いつきがいいとは思っていなくて少し狼狽えてしまう。あんなにぐるぐる考えていたのが馬鹿みたいにも思えてくるが、子供みたいに目を輝かせていつやる?と聞いてくる真壁を見ていたら、さっきまでのくだらない悩みが全て吹き飛んだ


















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作者名:ミルクレープ | 作成日時:2021年6月17日 0時

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