じゅーきゅー!!!! ページ21
あの後、西谷に放課後教室に残ってて、と伝えた。部活前の少しだけでいいから、と。
そして、その後は早かった。
授業もお昼休みも午後の授業も、全てが光の速さで終わっていった。
あっというまに放課後。
続々と帰ったり部活に行く人が、教室を出る。
私は、本を読んで人が居なくなるのを待った。
そして、最後の一人が西谷と挨拶を交わし、帰っていった。
今は、本当に二人だけ。
「A、人居なくなったぞ」
西谷の声がやけに響く。
放課後の校舎は先程とはうってかわって静かだ。
「あの、西谷」
西谷の前に立つ。
落ち着け。さっきリハーサルしただろ、私。
頭のなかで呻きながら、ゆっくり話す。
「私、高校に入ってから今まで笑えてなかった。笑えなかった。でも、西谷のお陰で、少しだけど笑えるようになったんだ。感謝してる」
「俺は感謝されることそんなしてないけどな!」
全然そんなことは無い。
感謝してもしきれないくらいだ。
だから、精一杯の笑顔で。
想いを伝えられたら。
「私、西谷が好きだよ」
手を差し出し、下を向いた。
多分耳まで紅くなっている。
そのまま、5秒くらい沈黙が続いた。
体感的には10分にも思えた。
「・・・・俺は」
西谷の声が、上から聞こえる。
「ずっと、潔子さんが好きだと思ってた。今でも、好きだけど」
「・・・うん」
「でも、Aと居ると潔子さんとは違う感じの好きが出来た。そんで、Aが他の男と付き合ったら、って考えると凄く嫌になった」
「・・・うん」
何も考えられない。頭が真っ白だ。
いや、混乱しているのかもしれない。
「潔子さんは憧れの好きだってことに気付いた」
だから、
西谷の息を吸う音が聞こえた。
「A、好きだ」
手に。温もりが伝わった。
ギュッと握ると、握り返してくる。
天にも上ってしまいそうな勢いで、私は嬉しくなった。
「付き合うってことで良いんだよな?」
「う、うん」
西谷は白い歯を見せて笑った。
*
体育館までの道を、西谷と歩く。
「A!部活では、ちゃんとマネージャーしろよ!」
西谷は冗談で言っているのだろう、笑いながら言ってきた。
「勿論、そのつもり」
こっちも笑いながら言った。
西谷は驚いていたが、また笑顔になる。
「やっぱり、Aは笑顔が一番だな!」
「西谷もね」
笑顔。
その言葉を胸に刻み、体育館の扉に手をかけた。
fin.
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作者名:カヨ林檎 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kayo3925/
作成日時:2019年7月20日 10時