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「わざわざ送って頂いて、有難うございます」



何度も断ったもののマンションの下まで送って貰うことになり、頭を下げれば気にするなと笑う彼。



「また、連絡する」



カレーも美味かった、と手を振り帰っていく背中が見えなくなるまで、その場を離れることはしなかった。














自室に戻ればお風呂を済ませて、寝室のベッドへと寝転ぶ。


部屋に誰かを呼んだのは久しぶりだった。誰かがいた部屋に一人でいるのは、何故だか寂しくなる。


ふと、出窓を見れば植木鉢の横に本が置かれてあった。


───紅郎さんが読もうとした本だ。




気になりベッドから起き上がればそれを手に取る。



「これは──、」






それは日本の伝統文化や昔の言葉、漢字の意味などこの一冊で昔の日本の事が大体わかるような本になっていた。


高校生だったか、そのくらいに和を好んで買った一冊だった。ぱらぱらと捲り、目を通していく。






手がとめたページは「いろは歌」の意味が綴られていた。


香りのいい色とりどりの花も
人の命も永遠ではない
無常の現世という深い山を今日超えれば
儚い夢を見ることも
現世に酔いしれることもないだろう



「因縁によって起こる一切の物事・・・、か」



他のページも捲っていき、ふと考える。




なぜ彼はこの本を手に取ったのか。



彼も、こういったものが好きなのか。はたまた興味があるのか。


なんにせよ、読もうとしていた本だろう。




ベッドの上に無造作に置かれてあるスマートフォンを取れば文字を打ち込んだ。



手に持っていた本は机の上に置くと、この前買った本が視界に入る。




「そういや、まだ読んでなかったな」







明日読むか。と、また誰に話すでもない独り言を呟いては寝室の灯りを消して瞼を閉じたのであった。

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あるびおん(プロフ) - Mashiro Lioさん» コメント頂き有難う御座います。とても褒めてくださって、感謝しかないです!適当な内容にしたくない為に更新は遅くなりがちですが、気長に見てくださると助かります。今後のストーリーの展開も、予想外になる可能性がありますがお付き合い下さいますと嬉しい限りです。 (2020年11月7日 18時) (レス) id: 8484e311ec (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - 昨年度から拝読しております。本当に素敵なお話で、初めて見たとき、つい読み入ってしまいました。地の文の描写が全体的に綺麗で、ストーリーも続きが気になって、もっと伸びろ!と毎度思います。これからも、ご無理のないように更新頑張ってください。 (2020年10月26日 7時) (レス) id: 97626e8ffb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あるびおん | 作成日時:2019年2月12日 7時

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