【文スト】君ヲ想フ、愛ノ物語2【太宰治】

参拾肆話 ページ4

友香がりこに近寄り、りこの頭に銃を突きつける。




「やめて！」




芙美子が駆け寄ろうとすると、そばにいた男が前に出てそれを遮った。


芙美子は目の前の男を睨みつけた。




「貴方が死ぬか、りこが死ぬか,どちらか選んでいただきましょう」



「いいえ、私も死なないし、りこも死なせはしないわ」




りこは寒さと恐怖で震えている。



そして、助けを求めて泣いている。




「......ごめんなさい、私にはこうすることしかできないわ」




悲しそうに目を伏せた芙美子をりこが男の隙間から涙目で見ている。




「異能力......狐六兵衛」




芙美子がつぶやくと、何も無いところから刀が出てきた。



そして狐の耳と尻尾。




「やっと姿をみせましたね。黒狐」



「そうね。大人しくりこを引き渡しなさい」



「それは無理なお願いです」



「....貴方がその気なら、こちらもそれなりの対応をとるわよ」




空中で刀を立てに降ると、友香の持っていた拳銃が後ろにいる太宰の足元まで吹っ飛んだ。



芙美子がそのすきに、りこを助けようとしたが、男が遮り、銃を突きつけた。




「おっと、それを撃つなら、こちらも撃つよ」




太宰が男に向かって銃を向ける。


男は身動きが取れなくなった。




そのすきに、芙美子が横腹を肘で思いっきり殴ると、男が横に倒れもがく。




芙美子は友香と向き合った。




「終わりね」



「私を....どうしますか」



「どうもしないわ。ただ、りこだけはこちらに渡しなさい」




負けを認めたのか、友香が深いため息をつくと、りこの縄を解き、自由にさせた。




「まま！！」



「りこ....！無事？」



「うん！」




駆け寄ってきたりこに膝をついて抱きつく。


りこもそれに安心したのか、事切れたように泣き出した。




「私の負けです」



「そうだね、君の完敗だ。このまま大人しく家に帰った方がいい」



「そうですね......ただ、私はりこを愛せる自信がありません」




太宰の提案に友香はまゆを下げる。


彼女はりこを幸せにできる自信が無いのだろう。




「愛というものは、簡単に見つかるよ。案身近にある」




太宰は視線を、隣にいるりこに抱きついてりこをあやしている芙美子に向けた。


すると、友香はクスリと笑った。




「そうですね。ご迷惑をおかけしました」




友香は深々と頭を下げる。




夜風がつめたく、静かに唸っていた。

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