Distance makes the heart grow fonder 2

♯46 ページ1

いつかは終わると分かっていた関係だし、手放すことも自分で選んだ
その事に後悔はしていないしすべきじゃないとも思う

でも、沈んでしまう気持ちは別だった

ふっとしたとき、太輔の事を思い出しては、涙ぐみそうになるのを慌てて気を紛らわす
それの繰り返し…

それゆえに母には心配をかけないよう出来るだけいつもの状態を保つようにしていた

Charles'Wainを退職したのはテキスタイルデザイナーとして独立したくてという理由を伝えたので、それの準備を少しずつ進め、どんなに食欲がなくても出来るだけ食べて、話しかけられたら笑顔で答えるようにする

しかし苦しい状態の中気持ちをずっと上げておくことは難しい
だから起きてる間のほとんどの時間、絵を描いて過ごすようになった
集中していれば時間の経つのは早いし、太輔の事を考えなくて済むから

退職して数日たったある日、無心に絵を描いているところに頭上から声が降ってきた

「宏光らしくない絵ね」
「…」
「あなた最近ぼんやりしすぎよ 話しかけても生返事が多いし、この絵も色が暗いし濁ってるし」
「…そうかな…」
「そうよ」

言われて改めて見れば、確かに悲しみしか感じない絵に見えてくる

「気分転換したほうがいいわ 時間もある事だし、おばあちゃん家に行ってきたら？」
「……」
「おばあちゃんも1人で住んでるし、あたしも中々様子を見に行けないから代わりに行ってきてくれない？」
「でも…」
「さっき話をして、宏光に時間が出来た事伝えたら久し振りに会いたいから待ってると言ってたの」

ここで行かないといったら祖母が悲しむ
それは出来ない

出来たらしばらく家に閉じこもっていたかったけど、あの手紙を読んだ太輔が怒って電話を掛けてきたり、実家に押し寄せて来るかもしれないと思ったら、ここにいるよりも祖母の所へ行っていた方がいいかもしれないと思い直した

もうすぐクリスマスと年末年始を来月に迎えるこの時期、ホテル業は更に忙しくなり、ましてやトップにいる太輔はいつも以上に忙しくなるから、わざわざ家まで来ることはないと思うけど、万が一彼と顔を突き合わせて問い詰められたら、自分は嘘を貫き通せない

それなら祖母のところへ身を隠すのが良い対策だと思った

「…わかった、おばあちゃん家へしばらく行ってくるよ」

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