Distance makes the heart grow fonder 2

♯50 ページ5

わがままかもしれないが、彼に見捨てられたのだと思うと息が止まりそうになり、泣かないよう奥歯を噛み締めた

するりと髪に指を絡めた太輔が続けて囁く

「でもこれだけは覚えておいて 僕はずっと君のことしか愛さない 君が二度と僕のことを思い出さなくても、僕はこの先一生君だけを想って生きていくよ」

じんと胸や目の奥が熱くなる
今にも零れ落ちそうな涙を瞬きしないことでなんとかこらえて、震える声を絞り出した

「……そんなのダメです…俺は貴方にふさわしくないのに…」
「誰がそんな事決めるの？自分に相応しい相手かどうかは僕が決める」

キッパリと断言され、瞳いっぱいに満ちてた涙が目尻から流れる

ふっと笑った太輔が目許にキスを落とし、涙を吸い取ってくれる…いつもの優しい仕草で
彼に選んで貰えることがとても嬉しい

「もうどうしたらいいのか…」
「うん？」
「太輔を幸せにしたいんです…俺では駄目なのに、貴方の言葉が嬉しくて、ずっと側に居たいなんて思ってしまうんです…」

泣きながらつまりながらも伝えると太輔はにっこりした

「それでいいんだよ 僕を幸せにしてくれるのは宏光だけだ 僕の為に身を引こうとしてくれたのは分かっているから、君が気に病まなくてもいいよう、話を付けてきたから」
「え？…」
戸惑う俺にそれ以上は説明せず、背中に回した手でイチョウの木の方へ促した

「詳しいことはうちに着くまでに話してあげる」
「え、でも…」
太輔のいう【うち】は別荘の事で、俺には入りづらい場所だ
それなのに太輔はひょいと小川を跨いで向こう岸に渡ってしまう

振り返り両手を広げ
「おいで、宏光」

そう言われても問題は解決されてないから、図々しく敷地内に踏み込むなんて出来ない
躊躇してる俺をじっと見つめてる太輔が

「宏光、僕を信じて 必ず君を幸せにする だから宏光も僕を幸せにしてくれないかな」

真っ直ぐな眼差し、真剣な声に彼の気持ちを悟る
何も分からないけど太輔を信じよう
大きく息を吸って、勢いをつけて飛ぶ

向こう岸に足がつくなり、恋人の身体で包み込むようにしっかりと抱き留められた

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