Distance makes the heart grow fonder

♯7 ページ8

しかしご主人に忠実で帽子を拾ってくれた犬(シェリって言ってたな)がTシャツの裾を噛み、こっちへ来いと引っ張っていく

「ごっごめん！離して 俺行けない」
慌てて噛まれたところを離そうとするが離れず、大型犬というのもありグイグイと凄い力で引っ張られしまい、とうとう小川を超えてしまう

観念し裾を引っ張られながら初めて小川の向こうへ足を踏み入れると...

急に視界が広がりそこに立派な豪邸がそびえ建ち、あきらかに庭なのだろう芝生が敷き詰められていてそこにパラソルのついたテーブルと2脚の椅子

その1脚に目元を包帯に覆われた男性が座っていた

裾を噛んでいたのを離したシェリは、ひと声鳴いて、その男性の足元近くまで走りお座りをする

「シェリお客さんは連れてきたんだね」
「わん」
すると見えては居ないのに先程シェリが鳴いた方へ顔を向けたので、真正面からその男性を見ることに

目線は交わらないけど見つめられてる感じがする
いたたまれなくなり挨拶をする事に

「す、すいません お邪魔してます 風で帽子が飛び小川へ落ちてしまい、取りに敷地内へ入ってしまったみたいです」
「あぁその声は数日前からここへ来ている人だね」
「あっはい...」
「ふふ畏まらなくても大丈夫だよ 君は安全な人と認識してるから」
「えっでも...」
「シェリが何回か会ってるみたいだけど危険を感じる鳴き声をしなかったから大丈夫と思ってる」
「ありがとうございます」
「もし良かったらここへどうぞ」

空いてる椅子へ座るよう勧められるが、躊躇してしまう
するとシェリが再び俺の所に来て、裾を噛み誘導してくる
「わっわかったよ」

椅子に向かって歩き出すと裾を離し、再び男性の所まで戻った

おどおどしながら椅子に座ると今度は身体ごとこちらへ向き
「名前聞いてもいいかな？」
「...あっ...宏光です」

苗字を言うと祖母に迷惑がかかると思い名前を伝える
「苗字は教えてくれないんだな 不法侵入者として訴えられると思ってる？」
「い、いえ...」

「ふふ、じゃっ宏光と呼んでもいいかな？俺は太輔、声の印象からして歳はそんなに変わらないと思ってるけど 俺は21歳」
「僕は20で美大に通ってます.....あの...藤ヶ谷財閥の太輔さんですよね？」
「あれ？分かってるんだ？じゃ尚更苗字を知りたいけど、まっそれは追求しないとくよ それより俺のこと″さん付け″で呼ばないで」
「でも...」
「お友達になってくれるんだろ？」
「...はい」
そう返事をすれば口元が弧を描いた

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