Distance makes the heart grow fonder

♯41 ページ42

太輔に求められている事を理由に、友輔さんの頼みに嫌だというのは簡単だ
自分の感情だけに従うなら…自分の目先の幸せを願うなら…

だけど一番幸せでいて欲しいのは太輔だ
太輔は周りから期待されきっちり応えてきた
それなのに俺を選ぶことで、彼は周りの期待を裏切ることになる
過去の弟の失態でさえ責任を感じた優しい人が、周囲を失望させて平気でいられるわけない

罪の意識に苛まれながらもその事を俺には何も言わず、1人で一生耐え続けるはずだ
そんな苦悩を太輔に与えるだけでも耐え難いのに、俺という存在そのものが更なる悩みをもたらしてしまう

そのせいで大好きな家族とも上手く関係を結べなくなってしまっては困る
俺の事も愛してくれてるのもわかってはいる
でも彼が苦しむなら、太輔を幸せに出来るのは俺じゃない

きつく目を閉じ辛い現実を受け入れた
出てこようとしない声をなんとか絞り出す

「……分かりました」
文句もいわずに同意した事に戸惑ったらしく、疑わしげな眼差しを向けられた
「本当に？」

無理して少し微笑み
「はい、俺はずっとこんな日が来るだろうと思っていました」
「随分ものわかりがいいんですね あぁ兄と別れるにあたって、引き換えにしたいご要望があるのですね？」

その一言でぎりぎりの状態で抑えていた感情が溢れた

「そんなもの何もありません！！ 太輔と絶対別れたくない、別れるくらいなら死んでやるって泣きわめいて取り乱した方が良かったですか!?」

切り返した声の切実さにこれまで大人しい印象を裏切る激しさに友輔さんが息を飲んだ
その表情にはっとして、大きく息を吐いて顔を伏せ
「…すいません」

友輔さんも気まずけに目を伏せる

「こちらこそ失礼しました ……本音を言うと、貴方がそんな人じゃなければよかったと思いますよ…」
「え？」
「貴方が私の悩みを聞いてくれるのは、兄の事を心から愛してくださっているからなんですよね…貴方がもっと自分のことしか考えていない人だったら、私は良心の呵責を感じずにすみました こんな人は兄に似合わない、二人を別れさせるのは正しいんだと思えたから」

遠回しながらも、俺を認めてくれている発言
別れさせに来た人がそんな風に言うなんて

唇を噛み締める俺の前で、友輔さんが胸ポケットから小切手を取り出した
せめてものお詫びにと、とんでもない額を書き込んで渡されそうになったのをきっぱりと断ると彼が心底困った顔をした

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