Distance makes the heart grow fonder

♯27 ページ28

「宏光の姿は知らなかったけど中身は分かってるつもりだよ 6年前姿に目を奪われず君の繊細さや優しさに気付けたからね」

真顔で言葉を返されて顔が熱くなる
おろおろと瞳が泳ぎつつ
「と、とにかく急すぎるので、もっとゆっくりお願いします…」
「宏光がそう言うのなら、ごめんね宏光も同じ気持ちでいてくれてると思って先走ってしまった もっと好きになってもらえるように努力しないと」
「…そんなの…必要ないです…」

自分も6年前、顔をちゃんと知らなくても彼を敬愛し、止めようもなく恋に落ちた
中身だけで魅力的な人とわかってたのに、再会して明らかになった彼の美貌は非の打ちどころがない

「友輔の様子を見ながら少しずつ伝えていくのはいいかな？」
「…少しずつなら」
譲歩されてるのが分かるから俺も譲る
にっこりと笑った彼に

「それで、何時までなら電話をかけてもいいか教えて」
「何時でもいいです」
「そんなに甘やかされるともっと宏光の負担になるほど求めてしまうんだけど」
「負担になんかならない…」

答えると抱きしめられて、太輔が用意してくれたタクシーで勤務先に送り届けられる時には、太輔のキスに頬を染めて、瞳をうるませていた






感性が作品に投影される仕事は作り手の気持ちがダイレクトに出やすい
背後を通りかかったテキスタイル部門チーフに指摘された

「お、風邪ひいて喉やられたって言ってた割に、すんごい幸せそうなデザインしてるね、なんかいい事あった？てかこれって絶対恋愛絡みでしょ！」

客観的にもらったコメントを聞いて改めてデザインを見れば、恥ずかしいくらい心の中の気持ちが反映されてる色使いになっていた
言い訳を苦し紛れにするが、チーフは取り合ってもらえなかったが

「でも学生アルバイトでウチに入った頃から北山は素直で可愛かったけど、ようやく可愛いだけじゃなくなったわ」
「…え？」
「このダークブルーやグレーなんて今までの北山だったら入れない色だけど、いいアクセントになってる 綺麗だけど色気のないデザインしてた北山にこんな素敵なデザインを生ませるんだからいい恋なんだね」

真っ赤になってる俺にふふんと笑って、チーフが去っていった

(色気とか…よく分からないけど…)

それでも仕事にいい影響があった事にほっとした
自分の選択が間違ってないと背中を押してもらった感じがしたから

その後も着々と仕事をして、いつもより少し早めに帰った

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