Distance makes the heart grow fonder

♯24 ページ25

初恋の人との夢は一夜限りのはずだった

朝になれば太輔は冷静さを取り戻し、思いがけない再会の感動という魔法が溶け、俺に困った顔を見せるはず
そうしたら俺はアルコールにお互い酔っていたということにして、「なかったことにしましょう」と告げるつもりだった
なのに…


「宏光、朝食は何がいい？ うちのホテルは焼きたてのクロワッサンとオムレツが人気なんだけど、喉が痛いならリゾットとかのがいいかな？」
上機嫌でルームサービスの相談をしてくる太輔は、ソファで膝の上に俺を横抱きにしている

全力で遠慮したけど全然聞いてもらえない上に
逃げようにも腰に力がちゃんと入らないし、あらぬところにはまだ何か入ってるかのような違和感

よれよれと歩くのが精一杯の俺を目が覚めた瞬間から太輔はひと時も手元から離さずお世話をしてくれてるのだ

(どうしよう…夢がさめない…)

現実のこととはどうしても思えず、困惑気味に彼を見上げる

「ん？」
眩しいくらいに今朝もキラキラ、物凄く満ち足りた顔で、幸せそうなオーラを纏い、昨日よりも更にゴージャスなキラキラになってる気がする…

ホテル内に太輔専用の部屋があるということで、俺が眠ってる間に着替えを済ませていた
ビジネス向きのスーツのスラックスにベストとワイシャツ、ネクタイをしていなくても見とれるほどカッコイイ

対する俺はいまだにバスローブ一枚
「後で着せてあげる」なんて冗談みたいな事をいった太輔に着替えを阻まれてしまったのだ

こんなエレガントな人に着替えを手伝われるなんて恥ずかしすぎて耐えれない
無意識に眉を下げると心配そうに顔を覗きこまれた

「食欲がない？ 熱はなかったけど もしかしてどこか痛い？」
「いっいや、どこも痛くはない…です…」
答えたものの弱々しい掠れ声

労わるように彼の手が喉に触れてくる
ぞくりと身体が震えてしまうのを懸命に我慢した
昨夜初めて知ったが、彼に触れられると普段なんとも思っていないところさえ、快感を生むらしい

「ごめんね いくら宏光の声が好きだからって、あんなに鳴かせるべきじゃなかったよ 次からは喉を傷めないようにキスを沢山するね」
「……っ」

真っ赤になってる顔で、何も言えず被りを振る
(「次」があるの前提?!)

昨夜と全く変わらないどころか、より一層甘くなった眼差しや声に、これからももっと大事にしてくれそうだと期待してしまいそうになる

でも期待はしたくない
ガッカリしたくないし…

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