Distance makes the heart grow fonder

♯15 ページ16

これは夢なんだろうか…
いや夢の方がしっくりくる
現実では有り得ないことが起きてて、動揺を隠せずにいると
「なんか信じたいけど信じられないって顔してるね」
的確に読み取られ目線を落とす

「貴方は僕の顔をご覧になったことは無いでしょ...想像してた″宏光″はこんな顔をしてなかったはずです...」
沈んだ声を出していたのか、腕が少し緩み顔を覗き込んできた

「貴方がもし6年前の″宏光″を好きになってくださったのは、顔をご覧になっていなかったからだと思います 顔も取り分け綺麗でもかっこよくもない普通の顔だし、想像してた顔と違ってガッカリしたはずです…」
「何言ってるの」

彼の手に優しく頬を撫でられそこが熱くなっていく

「君の姿がガッカリさせるなんて、どうしてそんな考えを起こすのか こんなに可愛いのに」
「.....っ」
「ずっと宏光はどんな顔をしているのだろうと考えてた あの時宏光に触れた感触を思い出しては、イメージをして探し続けていたけど、しっくりする人は見つけられなかったのにさっきパーティー会場で目があった瞬間、僕の中の″宏光″のイメージとハマったんだ この人があの時の宏光ならいいのにと これって運命的だと思わない？」

俺の顔を見つめて話す太輔はとても自信に溢れている
すると前髪をかきあげ、顕になった額に少し屈んでキスをされた

「ようやくこの目で見ることが出来た 僕の想像以上だったよ宏光」

くらくらするこんなのやはり夢だ
あまりにも鼓動が速くなりすぎてふらついた所を緩く回っていた腕に強く抱きとめられる

「あっすいません...」
くすっと笑われ「座った方がいいね」とソファーへ誘導された

動揺をしていたせいかもしれないが、しばらくすると自然と話が出来るようになり、6年ものブランクを感じさせないほど、互いの顔を見つめながらゆっくりと時間が繋がる

「はぁ、やっぱり宏光といると落ち着くな〜」
しみじみと呟く太輔に俺も同感
未だに鼓動は落ち着かないけど、居るべき所に戻ってきた不思議な感覚に満たされていた

でもだからっておかしい

少しずつ自分の立場を思い出し、おずおずと隣に座る太輔に
「あの...手をずっと握られてるけど」
実はソファーに座った直後から腰に回っていた腕は外れたが、代わりに俺の手を握りしめられていたのだ

「ごめんね、宏光をやっと見つけられたし、とても可愛くて浮かれてて離したくないんだ 宏光が嫌じゃなければこのままでいてくれない？」
「その聞き方ずるい…」

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